source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
(ショートバージョン)
大手建設会社のエリート社員アイヴァンが、妻子が待つ家に帰るため愛車に乗り込むと、そこに1本の電話がかかってくる。それを機に、彼は自宅ではなくロンドンへと車を走らせながら、翌日に控えた大切な仕事を一方的にキャンセルし、妻には家に戻れないと告げる。ある理由のため、一刻も早くロンドンへと向かおうとするアイヴァンだったが、次々にかかってくる電話によって人生のすべてが狂っていく…。
異色のワンシチュエーション映画「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」は、登場人物は車を運転する主演のトム・ハーディただ一人(他出演者は声のみ)。ドラマの進行や人物の背景を説明するのはすべて電話での会話のみ。場所は車という密室。特異な状況設定ながら、一瞬も飽きさせず緊張感が持続する演出が見事だが、それもそのはず、監督のスティーヴン・ナイトは秀作「イースタン・プロミス」などの脚本家なのだ。主人公がなぜ家族や仕事を放りだしてまで、ロンドンへと車を走らせているかは、会話によって次第に明らかになる。ネタバレは避けるが、過去のある過ちや自分の生い立ちから、主人公自身が決めたことを実行しようとしているのだ。その是非はさておき、主演のトム・ハーディが抜群にいい。「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」が動なら本作はさしずめ静。1本の電話によって人生から転がり落ちる焦燥を、表情や声だけで演じきった。全編車の中でドラマが進むのに、映像には映らない状況や過去を明白に想像できるのは、映像的な“行間を読む”感覚がある。一種の実験作だが、この映画、なかなかの拾い物だ。
異色のワンシチュエーション映画「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」は、登場人物は車を運転する主演のトム・ハーディただ一人(他出演者は声のみ)。ドラマの進行や人物の背景を説明するのはすべて電話での会話のみ。場所は車という密室。特異な状況設定ながら、一瞬も飽きさせず緊張感が持続する演出が見事だが、それもそのはず、監督のスティーヴン・ナイトは秀作「イースタン・プロミス」などの脚本家なのだ。主人公がなぜ家族や仕事を放りだしてまで、ロンドンへと車を走らせているかは、会話によって次第に明らかになる。ネタバレは避けるが、過去のある過ちや自分の生い立ちから、主人公自身が決めたことを実行しようとしているのだ。その是非はさておき、主演のトム・ハーディが抜群にいい。「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」が動なら本作はさしずめ静。1本の電話によって人生から転がり落ちる焦燥を、表情や声だけで演じきった。全編車の中でドラマが進むのに、映像には映らない状況や過去を明白に想像できるのは、映像的な“行間を読む”感覚がある。一種の実験作だが、この映画、なかなかの拾い物だ。
【75点】
(原題「LOCKE」)
(英・米/スティーヴン・ナイト監督/トム・ハーディ、ルース・ウィルソン、オリヴィア・コールマン、他)