source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
1996年、登山ガイド会社を経営する登山家ロブ・ホールは、登頂ツアーを率いるためヒマラヤ山脈に位置する世界最高峰のエベレストにやってくる。集まった8人の顧客は、世界各地から集まったいずれもベテランの登山家たち。ベースキャンプで入念な準備をし他のツアーとも協力しながら、いよいよ頂上に向け出発する。だが、体調不良や固定ロープの不備などで下山が大幅に遅れてしまう。天候が急激に悪化し、ツアーのメンバーは、人間が生存できないとされるデスゾーン(標高8000メートルを超える地帯)で、バラバラになってしまう…。
エベレストで1996年に起きた遭難事故の実話を映画化した「エベレスト 3D」は、実際にエベレストで撮影された臨場感あふれる映像に圧倒される。驚くのはツアーに参加し遭難事故に巻き込まれるのが、世界中の様々な山で経験を積んだベテラン登山家たちだったという事実。その中には紅一点で日本人女性(難波康子さん)もいたのだ。監督のバルタザール・コルマウクルは、1984年にアイスランド沖で実際に起こった海難事故を映画化した「ザ・ディープ」でも、過酷な状況でサバイバルを繰り広げる人間の苦悩や葛藤を描いたが、何より北欧・アイスランド出身ということもあって、寒さの質感を上手くとらえている。映画は極限状態に置かれた登山家たちの群像劇のスタイルだが、過剰な演出は避け、あくまでも淡々とドラマが進むだけに、エベレストの圧倒的な偉容と恐怖が際立った。この遭難事故は登山者の過剰な自信や準備不足、自然の脅威を知りながら引き際を見極められない人間の愚かさが生んだ悲劇だ。そして何よりも、エベレストの大衆化による商業登山への警鐘を鳴らす映画ととらえたい。もっとも3Dの映像はさしたる効果はないように感じるので、すっきりと2Dでも良かったのでは?とも思う。ハリウッドの豪華キャストが集結しているが、やはり主役はエベレスト。人間など所詮はちっぽけな生き物なのだ。
エベレストで1996年に起きた遭難事故の実話を映画化した「エベレスト 3D」は、実際にエベレストで撮影された臨場感あふれる映像に圧倒される。驚くのはツアーに参加し遭難事故に巻き込まれるのが、世界中の様々な山で経験を積んだベテラン登山家たちだったという事実。その中には紅一点で日本人女性(難波康子さん)もいたのだ。監督のバルタザール・コルマウクルは、1984年にアイスランド沖で実際に起こった海難事故を映画化した「ザ・ディープ」でも、過酷な状況でサバイバルを繰り広げる人間の苦悩や葛藤を描いたが、何より北欧・アイスランド出身ということもあって、寒さの質感を上手くとらえている。映画は極限状態に置かれた登山家たちの群像劇のスタイルだが、過剰な演出は避け、あくまでも淡々とドラマが進むだけに、エベレストの圧倒的な偉容と恐怖が際立った。この遭難事故は登山者の過剰な自信や準備不足、自然の脅威を知りながら引き際を見極められない人間の愚かさが生んだ悲劇だ。そして何よりも、エベレストの大衆化による商業登山への警鐘を鳴らす映画ととらえたい。もっとも3Dの映像はさしたる効果はないように感じるので、すっきりと2Dでも良かったのでは?とも思う。ハリウッドの豪華キャストが集結しているが、やはり主役はエベレスト。人間など所詮はちっぽけな生き物なのだ。
【65点】
(原題「EVEREST」)
(米・英/バルタザール・コルマウクル監督/ジェイソン・クラーク、ジョシュ・ブローリン、ジョン・ホークス、他)