2016年5月11日水曜日

追憶の森

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


追憶の森 (PARCO CINEMA NOVEL SERIES)
人生に絶望したアメリカ人アーサーは、死に場所を求めて、日本の富士山の北西に広がる青木ヶ原にやってくる。樹海の奥に分け入ったアーサーは、出口を求めて彷徨う日本人タクミと出会う。タクミは一度は死のうと考えたものの、思いとどまり、妻子のもとに帰ろうとしていた。アーサーは、ケガをしているタクミを放っておけず、出口を求めてさ迷ううちに、2人は、互いのことを語り合う。やがてアーサーも、これまでの人生を見つめなおし、生きるために樹海からの脱出を試みるのだが…。

自殺するために青木ヶ原樹海にやって来たアメリカ人男性の不思議な体験を描く人間ドラマ「追憶の森」。実は日本は、アメリカと並ぶ自殺大国。富士の樹海といえば、言わずと知れた自殺の名所で、そのことはネットを通して全世界中に知れ渡っている“隠れた名所”でもある。日本人にとっては恐ろしく忌まわしい場所というイメージの樹海だが、本作では、その場所は、人生を見つめなおし心を再生させる不思議な空間として描かれていて、そのことが、この映画にちりばめられている、意図的な違和感につながっているのだろう。アーサーが謎めいた日本人タクミに出会って語り合う合間に、喪失感を抱えたアーサーと亡き妻との過去が回想形式で語られていく。物語にはある仕掛けがあるのだが、スピュリチュアルといえば聞こえはいいが、どこか安っぽさは否めない。そもそも、大きな天災を体験した今の日本で、死に場所を求めてさ迷うという主人公に、共感することが難しいのだ。ただ、オスカー俳優のマコノヒーと、ハリウッドやブロードウェイでも活躍する国際派俳優の渡辺謙の演技合戦は見応えたっぷりで素晴らしい。ほぼ出ずっぱり、ほぼしゃべりっぱなしの会話劇は舞台のように緊張感がある。タクミの妻子の名前が不思議な響きなのは、最後の最後になって意味が判明。ちょっとこじつけすぎないか?とも思うが…。ともあれ、サント監督の死生観を描いた「永遠の僕たち」に続き、ここでも日本人俳優がキャスティングされているのが興味深いところだ。
【55点】
(原題「THE SEA OF TREES」)サント監督
(アメリカ/ガス・ヴァン・/マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ、他)
(度:★★★★☆)
チケットぴあ

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