2016年10月30日日曜日

【関連記事】今村昭(石上三登志)は、いかにして「人造人間」CMを世界におくり出したか

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック



SF少年の夢 1978年 04月号 (季刊 映画宝庫6)(amazon)


※石上三登志氏を中心に編纂されたSF映画ファンなら所有しておくべきバイブル的な書。手塚治虫が語る「キューブリック手紙事件」の詳細も興味深いし、SF映画のデータベースとしても貴重。中でもネットでも情報がほとんどない『2001年…』以前のオールドSF映画の情報の宝庫です。



─ 研修で「イエイエ」CMは見ていたので、目の前にいるひとが、その立役者なのはわかっていた。しかし彼が当時、石上三登志でもあり、盛んに映画評論を映画誌に書いていたことは、なにも知らなかった。だいたい、どんな映画が好きか?なんて聞かれたのは、電通では初めてだった。

「はあ、映画ですか?えー、僕は子供のころから特撮映画とか、SF映画が好きなのですが」。今村さんの眼鏡の奥の目玉が、キラッと光った(ように、見えた)。「特撮? SF? ほう、たとえば、どんな?」
─ わたしは、その時分、自分では最大のSF映画体験であった、あるタイトルを挙げた。

「2001年宇宙の旅、ですね」。

今村さんの目玉は、後の、「スターウォーズ」のC3POみたいに真ん丸に見開かれた。
「2001年…!? きみ、ちょっとさ、お茶にでも行かないか?」

…今村さんは、わたしを銀座電通のすぐ向かいの「ウエスト」に案内した。この喫茶は、現在もそうだが、当時も時間が止まっているかのような雰囲気、レトロな制服のウエートレスたち、アナログレコードのクラシック音楽、豊富かつ手が込んだスイーツ、で独特な店だった(現在ではアナログ機材はなくCDがかけられる。LPは保存されている)。

後年、今村さんと、わたしたちはここで、さまざまなCM企画を生み出すことになる。いわば、今村部の別室であった。

さて、今村さんはおもむろに口を開く。
「2001年宇宙の旅…、実は、僕はもう7回観ている」

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:電通報/2016年10月29日




 石上三登志さんと言えばキューブリック関連の書籍ではよくお名前を見かけた「キューブリックリアルタイム世代」の評論家で、管理人ような「キューブリック後追い世代」に多大な影響を与えた方です。『映画宝庫』の編纂者としても有名な方で、『映画宝庫 SF少年の夢』は管理人のバイブルでもあります。

 実は電通の有名なCMディレクターだったというのはこの記事で初めて知りました。専門の映画評論家だと思い込んでしまうほど、映画評論や映画雑誌での活躍が印象に残っています。この方のような「キューブリックリアルタイム世代」がどんどんと鬼籍に入ってしまうのと時を同じくして、ありもしない陰謀論やくだらない作り話が蔓延するようになった気がします。その一番の被害者はキューブリックが逝去後にファンになった「キューブリック逝去後世代」でしょう。自分自身にあまりプレッシャーをかけたくはないのですが、もうご高齢な「キューブリックリアルタイム世代」に頼れなくなってしまっている以上、私たちのような「キューブリック後追い世代」がしっかりと正しい情報を伝えなければならないと思いますし、このブログがその一助になればと痛切に思う次第です。