2020年11月5日木曜日

【関連記事】『シャイニング』でキューブリックが元のエンディングを変更した理由

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック


Shining-Still-01
『シャイニング』初公開時に存在した病院のシークエンスのポラ。

〈前略〉

スタンリー・キューブリックがエンディングを変えた理由

 『シャイニング』は観客に望ましい影響をもたらしたが、キューブリックはエンディングを変更することを選びました。「観客が戸惑う」という事実は、まさにキューブリックが望んでいたことでした。そして、この映画が(批評家に向けて)上映され、評判が良くなかったときに、(ワーナー・ブラザースは)当然のように『もういいから(病院のシーンを)削除してくれ』と提案したんです。キューブリックはそれを実行しました。この映画は主に人々を楽しませるための映画なのです。彼は頑固者ではありません。

〈中略〉

 ハーランは、キューブリックがホロコーストに関連したホラー映画(訳注:ホロコーストを題材にした真剣な映画は企画していた)を制作することはないと考えています。彼は『シャイニング』がホロコーストに関連しているという説は、「キューブリックが人類史上最も深刻な犯罪を軽々しく扱うということは、キューブリックに対する侮辱であり、ホロコーストの犠牲者に対する侮辱でもある」と述べています。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:Showbiz Cheat Sheet/2020年10月26日




 この記事の言う「元のエンディング」とは初公開時に数日間だけ存在した病院のシークエンスのことですが、これについては本人は「観客の興奮ぶりを初めて目の当たりにして、そのシーンは必要ないと思った」と説明しています。記事にあるワーナーがそれを指示したと言う話は初耳ですが、説明不足に輪をかけるようなこの決定をワーナーが指示したとはちょっと思えません。ソースはあるのでしょうか?アシスタントのレオン・ヴィタリは「ワーナーは特に何も言わなかった」と証言しています。ワーナーの誰かが「あのシーンはいらないんじゃないの?」と言ったのをキューブリックが聞いていて、改めて自分でロンドンで鑑賞し、そう判断したと言うのならあり得る話です。どちらにしても最終決定権はキューブリックにあります。映画本編に関しては誰もキューブリックに「指示(指図)」できません。それは明確に理解しておくべきでしょう。

 『ルーム237』というトンデモ映画のせいで「『シャイニング』がホロコーストを示唆してる」というトンデモ論が日本でも紹介されていますが、そもそも映画『ルーム237』というのは、ネット黎明期にあった『シャイニング』を陰謀論で遊ぶホームページが元になっていて、そこではマニアが「ビデオテープを逆再生したらこんなメッセージが聞こえた!」とやらかしていたものです。ですので、予告編がビデオデッキな訳ですが、DVDが全盛になってからこのネタは使えなくなってしまいました。迷惑しているのはキューブリックの関係者で、記事にある通りプロデューサーで義弟でもあるヤン・ハーランが公式に否定するハメになってしまいました。ヤンがこうして厳しい口調でホロコーストを否定するのは、ヤンの家系がナチスでユダヤ人を排斥するプロパガンダ映画を監督したファイト・ハーランに繋がっているのも影響しているのでしょう。そもそも、キューブリックはホロコーストを題材にしたシリアスな映画、『アーリアン・ペーパーズ』を企画していて、その事実もあるのに軽々に『シャイニング』がホロコーストと結び付けられてしまっていることに、苛立ちを覚えているのかも知れません。

 どちらにしても関係者はもちろんのこと、われわれファンにとっても迷惑な話なので(管理人はこのテの話題になると「本当ですか!!実はアメリカ大統領も宇宙人に教えを乞うているらしいですよ!知ってました?」と言ってあげることにしています。笑)無視するのが一番です。アクセスと広告費が是が非でも欲しい連中にとってこの「無視」が一番堪えますので、それを管理人は推奨いたします。