source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
「花とアリス」の前日譚を長編アニメで描いた「花とアリス殺人事件」。思春期のみずみずしさをアニメで最大限に表現している。
石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生の有栖川徹子、通称アリスは“ユダが、4人のユダに殺された”という奇妙な噂を耳にする。さらに、アリスの隣の家は“花屋敷”と呼ばれ、そこに住む、不登校のクラスメイト・荒井花、通称ハナなら、ユダと事件のことを詳しく知っているらしいということも。アリスは花屋敷に潜入し、そこで出会ったハナと共に、殺人事件の謎を解くために動き始めるが…。
2004年に公開された岩井俊二監督の「花とアリス」の前日譚に当たる本作では、主人公たちの出会いのきっかけとなった奇妙な事件と、彼女たちの間に友情が芽生える瞬間を描いている。思春期の女の子の揺れ動く心情をとらえるのに岩井監督は、自身初となるアニメーションを用いたが、これが大成功なのだ。技法としては、実写から描き起こすロトスコープという独特の手法である。バレエ教室のシーンや、街を疾走する場面で、全体の不フォルムが伸びたような、少し不思議なテイストが好印象を残す。淡い水彩画のような色彩の背景もいい。物語は1年前に起こった不思議な事件の謎を、ハナとアリスが紐解いていくミステリーなのだが、そこは中学生の女の子、何度も失敗し、何度も脱線し、何度もピンチを迎えることに。名作「生きる」へのオマージュらしきエピソードもあったりする。この物語の一番の魅力は、アリスとハナのキャラクターが魅力的なこと。離婚や転校、いじめなどにクールに対応する転校生のアリスは、ドライなようでいて実は人情家。引きこもりのハナは、頭の回転が早い変わり者だが、本当は恋する女の子。殺人事件の真相は映画を見て確かめてほしいが、ラストに生まれる、何でもない、でも、特別な関係性の中に青春のみずみずしさが凝縮されている。エンドロールの後に、岩井俊二監督の次回作の予告編が流れるので、最後まで楽しんでほしい。
石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生の有栖川徹子、通称アリスは“ユダが、4人のユダに殺された”という奇妙な噂を耳にする。さらに、アリスの隣の家は“花屋敷”と呼ばれ、そこに住む、不登校のクラスメイト・荒井花、通称ハナなら、ユダと事件のことを詳しく知っているらしいということも。アリスは花屋敷に潜入し、そこで出会ったハナと共に、殺人事件の謎を解くために動き始めるが…。
2004年に公開された岩井俊二監督の「花とアリス」の前日譚に当たる本作では、主人公たちの出会いのきっかけとなった奇妙な事件と、彼女たちの間に友情が芽生える瞬間を描いている。思春期の女の子の揺れ動く心情をとらえるのに岩井監督は、自身初となるアニメーションを用いたが、これが大成功なのだ。技法としては、実写から描き起こすロトスコープという独特の手法である。バレエ教室のシーンや、街を疾走する場面で、全体の不フォルムが伸びたような、少し不思議なテイストが好印象を残す。淡い水彩画のような色彩の背景もいい。物語は1年前に起こった不思議な事件の謎を、ハナとアリスが紐解いていくミステリーなのだが、そこは中学生の女の子、何度も失敗し、何度も脱線し、何度もピンチを迎えることに。名作「生きる」へのオマージュらしきエピソードもあったりする。この物語の一番の魅力は、アリスとハナのキャラクターが魅力的なこと。離婚や転校、いじめなどにクールに対応する転校生のアリスは、ドライなようでいて実は人情家。引きこもりのハナは、頭の回転が早い変わり者だが、本当は恋する女の子。殺人事件の真相は映画を見て確かめてほしいが、ラストに生まれる、何でもない、でも、特別な関係性の中に青春のみずみずしさが凝縮されている。エンドロールの後に、岩井俊二監督の次回作の予告編が流れるので、最後まで楽しんでほしい。
【65点】
(原題「花とアリス殺人事件」)
(日本/岩井俊二監督/(声)蒼井優、鈴木杏、勝地涼、他)
・花とアリス殺人事件@ぴあ映画生活