source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
見知らぬ人を悼む旅を続ける青年を通して生と死の意味を問う人間ドラマ「悼む人」。儀式のように繰り返す主人公の所作が美しい。
残忍な殺人や下世話な事件ばかりを扱う週刊誌記者の蒔野は、ある時、死者を“悼む”ために全国を放浪している青年・静人と出会って興味を持ち、静人のことを調べはじめる。また夫を殺して服役して以来、夫の亡霊につきまとわれている女性・倖世も静人と出会い、旅に同行することになるが…。
原作は、天童荒太の直木賞受賞作。縁もゆかりもない、不慮の死を遂げた死者を悼む旅は、まるで巡礼のようだ。主人公の静人がそんな旅をする目的は、本当に親しく愛した人のことさえ記憶が薄れることへの危機感と罪悪感だと、説明らしきセリフがあるが、実際のところ、彼の何を求めているのかは曖昧になっている。人の善意を信じられない蒔野や、夫の霊につきまとわれる倖世と同じように、観客は最初は訝しい思いを感じるだろう。そしてそのモヤモヤした何かを知るために、観客もまた静人の旅に同行することになる。「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されたか」を問いかけ、そのことを覚えておくと語るのは、非業の死より、生きた証を刻みたいということだろう。主人公を演じる高良健吾は、片膝をつき、左右の手を順に広げた後、胸の前でそっと組む。最初は大仰に思えるその仕草も、末期がんにおかされた彼の母や、たとえ一人でも子供を生もうと決めた彼の妹などのエピソードが積み重なっていくにつれ、荘厳な儀式に見えてくるから不思議だ。旅のロケ地は主に東北地方。春の桜や冬の雪の美しい自然の風景と共に、ラストの、生と死が交錯するかのような幻想的な場面のように、人の手による技術的なヴィジュアルが絶妙に混在した映像が印象的だった。
残忍な殺人や下世話な事件ばかりを扱う週刊誌記者の蒔野は、ある時、死者を“悼む”ために全国を放浪している青年・静人と出会って興味を持ち、静人のことを調べはじめる。また夫を殺して服役して以来、夫の亡霊につきまとわれている女性・倖世も静人と出会い、旅に同行することになるが…。
原作は、天童荒太の直木賞受賞作。縁もゆかりもない、不慮の死を遂げた死者を悼む旅は、まるで巡礼のようだ。主人公の静人がそんな旅をする目的は、本当に親しく愛した人のことさえ記憶が薄れることへの危機感と罪悪感だと、説明らしきセリフがあるが、実際のところ、彼の何を求めているのかは曖昧になっている。人の善意を信じられない蒔野や、夫の霊につきまとわれる倖世と同じように、観客は最初は訝しい思いを感じるだろう。そしてそのモヤモヤした何かを知るために、観客もまた静人の旅に同行することになる。「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されたか」を問いかけ、そのことを覚えておくと語るのは、非業の死より、生きた証を刻みたいということだろう。主人公を演じる高良健吾は、片膝をつき、左右の手を順に広げた後、胸の前でそっと組む。最初は大仰に思えるその仕草も、末期がんにおかされた彼の母や、たとえ一人でも子供を生もうと決めた彼の妹などのエピソードが積み重なっていくにつれ、荘厳な儀式に見えてくるから不思議だ。旅のロケ地は主に東北地方。春の桜や冬の雪の美しい自然の風景と共に、ラストの、生と死が交錯するかのような幻想的な場面のように、人の手による技術的なヴィジュアルが絶妙に混在した映像が印象的だった。
【65点】
(原題「悼む人」)
(日本/堤幸彦監督/高良健吾、石田ゆり子、井浦新、他)
・悼む人@ぴあ映画生活