2015年2月8日日曜日

マンゴーと赤い車椅子

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








事故で歩けなくなったヒロインが困難を乗り越えて人生に向き合う姿を描く「マンゴーと赤い車椅子」。監督自身の実体験が演出に盛り込まれている。



看護師として働いていた彩夏は、事故による脊髄損傷で歩けなくなる。家族や周囲に苛立ちをぶつけて心を閉ざした彩夏に希望の光を投げかけたのは、病院の仲間、彩夏に無償の愛を注ぐ鹿児島の祖母、そして最後のライブに向けて全力を注ぐ車椅子のミュージシャンの翔太だった。やがて生きる希望を取り戻した彩夏は、故郷・鹿児島の家族が育てる赤いマンゴーを思い起こさせる、真っ赤な車椅子をオーダーし、前に進んでいこうと決意する…。



本作はある看護師の手記をベースにしているが、監督の仲倉重郎自身が車椅子生活を送っていることもあって、リハビリの様子や、段差・障害物など車椅子操作の難しさなど、細部がリアリティに満ちている。ヒロイン・彩夏が自暴自棄になっているのは、歩けなくなったことの情けなさと、不倫の恋に破れたつらさ、さらには看護師として病人を助ける立場だった自分が助けられる側に回った悔しさなど、さまざまな要因があるが、何よりも現実を受け入れられない自分へのいらだちが大きいのだ。車椅子生活を送る人間、皆が通るであろうこの精神状態を自分なりに乗り越えた病院仲間が彼女を励ますが、いつも明るい年下の少女・千尋もまた悲しみを心に秘めている。彩夏と惹かれ合う翔太は、ぶっきらぼうだが、彩夏を戦友、赤い車椅子を赤い戦車と呼んで、「甘えるな、負けるな」と激励。特に命がけで彼女を助ける場面は、残り時間が少ない自分に比べて、生きることを許されているのに戦おうとしないばかりか、命を粗末にする彩夏を強烈に批判しているのだ。障害を扱う映画に対しては、文句が言いにくのだが、彩夏と翔太の恋愛描写はとってつけたよう。EXLE、三代目J Soul BrothersのNAOTOの演技がぎこちないのも気になった。だが、秋元才加をはじめ出演者が、通常の芝居より大変な車椅子での演技に懸命に取り組んだ頑張りを評価したい。鹿児島県大隅半島の美しい自然描写に心が癒された。

【50点】

(原題「マンゴーと赤い車椅子」)

(日本/仲倉重郎監督/秋元才加、NAOTO、石井貴就、他)

(リアル度:★★★★☆)

チケットぴあ



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ←ランキング参加中です!



人気ブログランキング ←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)



マンゴーと赤い車椅子@ぴあ映画生活