2015年2月26日木曜日

バベルの学校

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評






La Cour de Babel [DVD]

フランス語を学ぶ適応クラスの子供たちの成長を追ったドキュメンタリー「バベルの学校」。しっかりと自己主張する子供の姿に目を見張る。



パリ市内の中学校の適応クラス。そこには、国籍、宗教、肌や髪の色もバラバラの、11歳から15歳までの生徒が、フランス語の集中トレーニングを受けるため、集まっている。“違い”に真正面から向き合う生徒たちは、時に大声で口論し、ぶつかり合い、涙することも。教師もまたそんな彼らと根気強く向き合う。映画は、個性豊かな生徒たちと先生の1年間を追いかける。



ジュリー・ベルトゥチェリ監督の過去作「やさしい嘘」や「パパの木」は共に劇映画だが、どこかファンタジックな、それでいて現実を鋭いまなざしでみつめる視点があった。それは、世界の縮図のような適応クラスの1年間を、淡々と写し取ったこのドキュメンタリーでも、活かされているように思う。適応クラスで学ぶ生徒たちが移住してきた理由は、母国での圧政、経済的な事情、人種差別による迫害、亡命、あるいは、単によりよい生活を求めて、などバラバラだ。当然、家庭環境のバックグランドも異なる。だが何よりも、生徒それぞれの個性の豊かさに驚かされた。セネガル人の少女は決して自分の非を認めずいつもケンカやトラブルが絶えない。反対に中国人の少女は口数が少なく引っ込み思案だ。そんな子供たちが少しずつ歩み寄り、成長し、友情を育むプロセスには、どんな時にも真摯に生徒と向き合う、ブリジット・セルヴォニ先生がいる。教師生活の最後の年にクラスを受け持った先生は、過剰な自己主張も決して否定せず、生徒の反抗的な態度にはその理由を根気強く探ろうとするのだ。たとえ移民だとしても、個人の権利を守り、教育制度を整える、フランスという国の度量の大きさを感じずにはいられないが、その一方で、わざわざこういう作品が生まれてくる背景には、一連のテロ事件によって、よりクローズアップされている、移民問題の根深さがあるのだろう。ラスト、それぞれのレベルで次のステップへ上がった子供たちの笑顔に、希望を見る思いだった。

【65点】

(原題「LA COUR DE BABEL/SCHOOL OF BABEL」)

(フランス/ジュリー・ベルトゥチェリ監督)

(問題提起度:★★★★☆)

チケットぴあ



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