source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
メキシコの都市シウダー・フアレス。世界で最も危険な街と言われるそこには、強大な力を持つ麻薬密輸カルテルが存在し、凶悪犯罪、殺人事件が絶えない。毎日、危険な職務に励む警察官と、麻薬王を讃える音楽“ナルコ・コリード”の歌手に焦点をあてながら、メキシコの麻薬戦争の深い闇を浮き彫りにする…。
イスラエル出身で、報道写真家としても活躍するシャウル・シュワルツ監督が描く衝撃的なドキュメンタリー「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」では、警察官リチ・ソトとメキシコ系アメリカ人歌手のエドガー・キンテロという正反対の立場の2人が登場する。とりわけ、メキシコ発の音楽ジャンル“ナルコ・コリード”に着目した視点が興味深い。エドガーの歌は、メロディだけ聴けば陽気だが、その音楽の歌詞は、トンデモなく獰猛で、麻薬組織(ナルコ)の武勇伝を礼賛するもの。「手にはAK-47 肩にはバズーカ 邪魔する奴は頭を吹っ飛ばす 俺たちは血に飢えているんだ 殺しには目がないぜ」という内容を知れば、陽気な音楽などと生ぬるいことは言えなくなくなる。これは近未来SFマンガの世界でも、終末世界を描く「マッド・マックス」でもなく、紛れもない現実なのだ。死亡者8万人、血で血を争う麻薬戦争のそばにいながら、正義を信じる警官リチの存在が奇跡に思えるが、同時にリチの顔には深い諦念がにじむ。ラストに移される広大な墓地の風景こそが最大のメッセージなのかもしれない。
イスラエル出身で、報道写真家としても活躍するシャウル・シュワルツ監督が描く衝撃的なドキュメンタリー「皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇」では、警察官リチ・ソトとメキシコ系アメリカ人歌手のエドガー・キンテロという正反対の立場の2人が登場する。とりわけ、メキシコ発の音楽ジャンル“ナルコ・コリード”に着目した視点が興味深い。エドガーの歌は、メロディだけ聴けば陽気だが、その音楽の歌詞は、トンデモなく獰猛で、麻薬組織(ナルコ)の武勇伝を礼賛するもの。「手にはAK-47 肩にはバズーカ 邪魔する奴は頭を吹っ飛ばす 俺たちは血に飢えているんだ 殺しには目がないぜ」という内容を知れば、陽気な音楽などと生ぬるいことは言えなくなくなる。これは近未来SFマンガの世界でも、終末世界を描く「マッド・マックス」でもなく、紛れもない現実なのだ。死亡者8万人、血で血を争う麻薬戦争のそばにいながら、正義を信じる警官リチの存在が奇跡に思えるが、同時にリチの顔には深い諦念がにじむ。ラストに移される広大な墓地の風景こそが最大のメッセージなのかもしれない。
【65点】
(原題「NARCO CULTURA」)
(米・メキシコ/シャウル・シュワルツ監督/リチ・ソト、エドガー・キンテロ、他)
・皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇@ぴあ映画生活