2015年6月1日月曜日

ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Get on Up
キング・オブ・ソウルこと歌手ジェームス・ブラウンの破天荒な半生を描く「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」。C.ボーズマンのなりきりぶりは必見。

アメリカ南部の貧しい家庭に生まれたジェームス・ブラウン(JB)は、幼い頃両親に捨てられ、不遇の少年時代を送る。貧しさから働いた犯罪で刑務所に入った彼は、そこで生涯の親友となるボビー・バードと出会い、出所後は、音楽の道へと進むことに。ヒット曲も生まれ、大スターへの階段を駆け昇るJBだったが、同時に、派手な女性関係、仕事仲間との諸問題、自分を捨てた母との関係性や妻への暴力と、さまざまなトラブルに見舞われる。上昇嗜好が強く常に革新を求めるJBは、仕事仲間と衝突し、ついに親友のボビーまでも彼のもとを去って行くが…。

類まれな音楽の才能と、ビジネスセンス、常に時代の先を行く革新性。JBの人生はまさに波瀾万丈だ。映画は極貧の少年時代から、音楽界でめきめきと頭角を現し、黒人差別が激しい時代に白人と対等に渡り合い、やがて時代の寵児になっていく様、トラブル続きの人間関係などを、晩年のJBの回想形式で描いていく。強烈なシャウトで周囲を圧倒する歌声やキレ味鋭いダンス・パフォーマンスはもちろん魅力的だが、映画は、多くのミュージシャンを抱えたJBの横暴なリーダーぶりや、妻に対してのDVなど、彼のダークサイドもしっかり描く。何しろ主演のチャドウィック・ボーズマンのなりきりぶりがすごい。顔は似ていないのに、JBの話し方、歌、ダンスを徹底的に研究し、本人そっくりに見える。光が強烈ならその影もまた濃い。歌うだけでなく宣伝活動やプロモーションも自分で行い、一方で、公民権運動の最前線に立つことも。母親から見捨てられたことが後のJBの人間性に大きな影響を及ぼしているのは明白だが、同時にそんな悲劇さえ軽々と乗り越えるパワーもまた明白だ。スクリーンから時折、観客に語りかける演出は、愛されたいとの思いと重なる。欠点も多いがなぜか憎めない俺様モードの天才の、秘めた寂しさを感じさせて効果的だった。
【65点】
(原題「GET ON UP」)
(米・英/テイト・テイラー監督/チャドウィック・ボーズマン、ネルサン・エリス、ヴィオラ・デイヴィス、他)
(俺様度:★★★★☆)
チケットぴあ

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