2015年6月21日日曜日

愛を積むひと

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


愛を積むひと (小学館文庫)
不器用な夫と彼を支えた亡き妻の愛の軌跡を描く「愛を積むひと」。美しい風景の中で綴られる温かいストーリーが心にしみる。

第二の人生を自然豊かな北海道で過ごそうと、東京から北海道に移り住んだ篤史と良子の夫婦。仕事一筋だった篤史がヒマを持て余しているのをみかねた良子は、かねてからの夢だった石塀作りを篤史に依頼する。だが良子は長年患っていた心臓の病を悪化させ他界。悲しみにくれる篤史に、良子からの手紙が届く。夫を心配して良子はたくさんの手紙を残していたのだ。石塀作りを手伝う青年・徹との交流や、ずっと疎遠になっていた娘の聡子との再会。閉ざしていた心を少しずつ開きながら、亡き妻を思いつつ石を積み上げていく篤史だった…。

原作は、エドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積む人」。第二の人生、パートナーを失う悲しみ、そして再生と希望。明らかにシニア向けの作品だが、語り口がとても丁寧で、娘や若者世代の視点もあるので、親子揃っての鑑賞も良さそうだ。妻の良子は明るいしっかり者で何事にも前向き。一方、夫の篤史は不器用で女房依存症。こういう差異もあって、良子を亡くしてからの篤史の悲嘆が際立ってくる。人は一人では生きられないことを、良子は何より手紙で伝えたかったのだろう。石塀作りを手伝う徹のあやまちを許し自分から手を差し伸べ、不毛な恋愛によって断絶状態だった娘の聡子の生き方も肯定する気持ちになった篤史は「石塀は大きくて立派な石だけで出来ているんじゃない。小さくて不恰好な石もちゃんと役割を果たしている」という示唆に富んだ言葉を口にする。その時こそ亡き妻が言った「古い石がそのうえに積まれる新しい石を支えるように、私たちが毎日を精一杯積み上げていくことが、次の世代の生きる支えとなる」という言葉が感動的に響くのだ。タフでハードボイルドな役が多かった佐藤浩市が、珍しく弱さを露呈する普通の夫を好演。「日本で最も美しい村」連合第1号に認定された美瑛町でロケされた映像の美しさにも目を見張る。
【65点】
(原題「愛を積むひと」)
(日本/朝原雄三監督/佐藤浩市、樋口可南子、北川景子、他)
(夫婦愛度:★★★★☆)
チケットぴあ

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