2015年6月19日金曜日

グローリー 明日への行進

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Selma - Music from the Motion Picture
(ショートバージョン)
アメリカ公民権運動が盛り上がりを見せる1965年。前年にノーベル平和賞を受賞したマーティン・ルーサー・キングJr.牧師をリーダーとする黒人たちが、選挙権を求めアラバマ州セルマで立ち上がった。だが、白人の州知事と州警察の暴力的鎮圧により多くの血が流される。この映像がテレビで全米中に流れたことで、抗議デモはさらに激しさを増し、やがて世論、大統領、さらには世界を動かすことになる…。

映画でたびたび登場する公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・Jr、通称キング牧師。「グローリー 明日への行進」が、この人を主人公にした初めて映画だと聞いて、ちょっと意外だった。物語の中心になるのは、黒人たちが暴力的鎮圧を受ける「血の日曜日事件」と、その後、全米を巻き込んだ大行進。主人公・キング牧師は、ただ神に祈るだけの聖職者ではなく、さまざまな顔をみせる多面的な人物として描かれている。同士たちには熱い熱弁をふるう指導者、大統領とはかけひきや強引さも辞さない政治家の顔をみせる。さらには家庭人としての苦悩も。とはいえ、彼が抱えた葛藤は比較的さらりと描くのみで、やはり「肌の色など関係ない。人は平等であるべきだ」という強い信念が際立った。その信念の代償として、キング牧師がわずか39歳の若さで命を落とした事実を知っているだけに、彼が実行した「ただ歩く」という偉業がなおさら胸を打つ。デヴィッド・オイェロウォという舌を噛みそうな名前の英国人俳優は、舞台出身の実力派。映画に出演もしているコモンと、ジョン・レジェンドが歌う主題歌「Glory」は、第87回アカデミー賞歌曲賞を受賞している。
【65点】
(原題「SELMA」)
(アメリカ/エヴァ・デュヴァネイ監督/デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、オプラ・ウィンフリー、他)
(葛藤度:★★☆☆☆)