2015年7月17日金曜日

フレンチアルプスで起きたこと

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




(ショートバージョン)
スマートなビジネスマンの夫トマス、美しい妻エバ、2人の可愛い子供たちの、スウェーデン人一家が、フランスの高級リゾート地にスキー・バカンスにやってくる。一家が山際のテラスで楽しくランチをとっていると、突如、雪崩が発生し、テラスは大パニックに。幸い雪崩は直前で止まり、大事には至らなかったが、この時、トマスがとった“父親らしからぬ行動”が、家族の間に波紋を呼び、トマスは妻子の信用を失ってしまう…。

人間というものは、非常事態にこそ本性が出るものだ。スキーリゾートで雪崩が発生と言われれば、普通はパニックものかと思うだろうが、この映画は、むしろ不穏にして辛辣な心理サスペンスだ。雪崩が起こった時、父親は、家族を置いて自分だけすたこらさっさと逃げてしまう。本能とはいえ、これはマズい。言い訳ばかりする夫(でも映像がしっかり残っていたりする)、ネチネチと責める妻、子供たちもあきれ顔だ。今どき、家族を守るマッチョな大黒柱の父親像など、誰も求めていないだろうが、それにしてもこのパパの行動は残念すぎる。夫婦の間に生じた不信感がビバルディの音楽に煽られるようにふくらんでいき、もはや修復不可能な状態に。痛々しい物語は、最後の最後まで皮肉に満ちている。原題は不可抗力といったニュアンスらしいが、いやはや、その一言では片づけられない、危機管理能力の問題をはらんでいるのだ。北欧版ミヒャエル・ハネケと称されるのが納得の映画で、世界中の映画祭で賞を受賞したのも頷ける。なみにハリウッド・リメイクも決まっているそう。リューベン・オストルンド監督、この人の名前は覚えておこう。
【70点】
(原題「FORCE MAJEURE」)
(スウェーデン・デンマーク・仏・ノルウェー/リューベン・オストルンド監督/ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ、クララ・ヴェッテルグレン、他)
(不穏度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
フレンチアルプスで起きたこと@ぴあ映画生活