source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
わたしに会うまでの1600キロ [Blu-ray] [Blu-ray]
人生をやり直すために1,600キロの距離を3か月かけて1人で歩き通した女性の実話「わたしに会うまでの1600キロ」。リースが文字通り体当たりの演技をみせる。
シェリルは母親の死に耐えられず、優しい夫を裏切っては薬と男に溺れた末に、結婚生活を破綻させてしまう。母親が誇りに思ってくれた自分を取り戻すため、また、人生を一からやり直すため、シェリルは大きな決断を下すことに。それは1600キロもの自然歩道パシフィック・クレスト・トレイルをひとりで踏破するというものだった。彼女の前には、極寒の雪山や猛暑の砂漠などの厳しい自然がたちはだかる…。
原作はシェリル・ストレイドの自叙伝だ。人生を建て直し、自分探しの旅をする女性。こう書くといかにも平凡なのだが、圧倒的な大自然の中で浄化されていく現在と、すさみきった過去を交錯させて描くことで、何のトレーニングも受けていない女性の無謀な挑戦が、神聖な生まれ変わりの儀式のように思えてくる。1600キロものパシフィック・クレスト・トレイルは、アメリカ西海岸をメキシコ国境からカナダ国境まで南北に縦断する自然歩道。ベテランハイカーでさえ挫折するこのルートを、素人のシェリルが歩こうというのだから、トラブルは当たり前だ。冒頭、靴擦れと生爪による痛みと叫びが、山中にこだまし、心身ともに傷だらけのヒロインのサバイバルが始まる。観客を強引に主人公に追随させるこのシーンから、一気に引き込まれるだろう。旅はひとりぼっちだが、出会いは多い。過去の男性遍歴が生々しいだけに、現在の旅で出会う彼らとの関係は、まるで同志のように清々しい。主演のリース・ウィザースプーンは、コメディ、あるいは優等生のイメージが強い女優だが、本作ではボロボロになりながら歩き続け、ヌードも辞さないセックスシーンにも挑戦する熱演で、素晴らしい。「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督の、俳優の肉体的な変容から心の変化に結びつける演出が巧みだが、同時に圧倒的な荒野の美しさをとらえた映像にも心を奪われる。加えて、旅の途中にヒロインがノートに書くさまざまな言葉が何と心にしみることか。一歩ずつ前に進む。時にはバカなことをしてでも乗り越える。勇気をもらえる物語だ。
シェリルは母親の死に耐えられず、優しい夫を裏切っては薬と男に溺れた末に、結婚生活を破綻させてしまう。母親が誇りに思ってくれた自分を取り戻すため、また、人生を一からやり直すため、シェリルは大きな決断を下すことに。それは1600キロもの自然歩道パシフィック・クレスト・トレイルをひとりで踏破するというものだった。彼女の前には、極寒の雪山や猛暑の砂漠などの厳しい自然がたちはだかる…。
原作はシェリル・ストレイドの自叙伝だ。人生を建て直し、自分探しの旅をする女性。こう書くといかにも平凡なのだが、圧倒的な大自然の中で浄化されていく現在と、すさみきった過去を交錯させて描くことで、何のトレーニングも受けていない女性の無謀な挑戦が、神聖な生まれ変わりの儀式のように思えてくる。1600キロものパシフィック・クレスト・トレイルは、アメリカ西海岸をメキシコ国境からカナダ国境まで南北に縦断する自然歩道。ベテランハイカーでさえ挫折するこのルートを、素人のシェリルが歩こうというのだから、トラブルは当たり前だ。冒頭、靴擦れと生爪による痛みと叫びが、山中にこだまし、心身ともに傷だらけのヒロインのサバイバルが始まる。観客を強引に主人公に追随させるこのシーンから、一気に引き込まれるだろう。旅はひとりぼっちだが、出会いは多い。過去の男性遍歴が生々しいだけに、現在の旅で出会う彼らとの関係は、まるで同志のように清々しい。主演のリース・ウィザースプーンは、コメディ、あるいは優等生のイメージが強い女優だが、本作ではボロボロになりながら歩き続け、ヌードも辞さないセックスシーンにも挑戦する熱演で、素晴らしい。「ダラス・バイヤーズクラブ」のジャン=マルク・ヴァレ監督の、俳優の肉体的な変容から心の変化に結びつける演出が巧みだが、同時に圧倒的な荒野の美しさをとらえた映像にも心を奪われる。加えて、旅の途中にヒロインがノートに書くさまざまな言葉が何と心にしみることか。一歩ずつ前に進む。時にはバカなことをしてでも乗り越える。勇気をもらえる物語だ。
【75点】
(原題「WILD」)
(アメリカ/ジャン=マルク・ヴァレ監督/リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、他)