source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
(ショートバージョン)
1981年のニューヨーク。モラルを失くしたつぶし合いと競争が当たり前のオイル業界で、クリーンなビジネスを展開し成功を収めた移民のアベルと妻のアナは、さらなる事業拡大のために、土地購入の頭金として全財産を投入する。だが、直後に彼らの成功を阻止しようとする何者かによってオイルが強奪される事件が発生。さらに、脱税や家族への脅威など、次々に難題が降りかかり、ついに銀行からの融資も断られた上、信頼し合っていた夫婦間にも亀裂が生じてしまう。孤立無援でトラブル解決のために奔走するアベルだったが、破産までの期限は、わずか30日しかなかった…。
オイルビジネスに参入した実業家夫妻の苦悩を描く「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」。1981年という年は、暴力が氾濫し、史上もっとも犯罪件数が多かった恐ろしい年だ。クリーンなビジネスを信条とし銃で防衛することを拒否するアベルに対し、ギャングの父親を持ち、会社の経理を担当する妻のアナは「これは戦争よ」ときっぱりと断言する。この物語は誰もが手を汚して生きる時代に、誠実に正義を貫くことは可能なのかと問いかけるものだ。移民であるアベルは自分だけの力で手にするアメリカン・ドリームにこだわっているかに見える。一方で、アナは汚れてしまった現実を冷静に直視している。アベルの理想がどういう形で変質していくかを、静かでドライなタッチで描く物語では、劇的な演出はほとんどない。あえて人間の複雑な心理に寄り添っているので、派手さはないが、玄人好みのドラマに仕上がっている。監督のJ・C・チャンダーは「マージン・コール」では金融界を、「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」では海での遭難を描いたが、共通するのは、ちっぽけな人間の懸命なサバイバルだ。犯罪が横行するオイル業界でのサバイバルは、単なる善悪や敵味方では分けられない、苦く曖昧な境界線を越えねばならない。理想と現実の間で苦悩する男をオスカー・アイザックが静かに熱演。寒々しい冬の風景が、崩れ去ったアメリカン・ドリームを象徴していた。
オイルビジネスに参入した実業家夫妻の苦悩を描く「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」。1981年という年は、暴力が氾濫し、史上もっとも犯罪件数が多かった恐ろしい年だ。クリーンなビジネスを信条とし銃で防衛することを拒否するアベルに対し、ギャングの父親を持ち、会社の経理を担当する妻のアナは「これは戦争よ」ときっぱりと断言する。この物語は誰もが手を汚して生きる時代に、誠実に正義を貫くことは可能なのかと問いかけるものだ。移民であるアベルは自分だけの力で手にするアメリカン・ドリームにこだわっているかに見える。一方で、アナは汚れてしまった現実を冷静に直視している。アベルの理想がどういう形で変質していくかを、静かでドライなタッチで描く物語では、劇的な演出はほとんどない。あえて人間の複雑な心理に寄り添っているので、派手さはないが、玄人好みのドラマに仕上がっている。監督のJ・C・チャンダーは「マージン・コール」では金融界を、「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」では海での遭難を描いたが、共通するのは、ちっぽけな人間の懸命なサバイバルだ。犯罪が横行するオイル業界でのサバイバルは、単なる善悪や敵味方では分けられない、苦く曖昧な境界線を越えねばならない。理想と現実の間で苦悩する男をオスカー・アイザックが静かに熱演。寒々しい冬の風景が、崩れ去ったアメリカン・ドリームを象徴していた。
【70点】
(原題「A MOST VIOLENT YEAR」)
(アメリカ/J・C・チャンダー監督/オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デヴィッド・オイェロウォ、他)
(劇的度:★★☆☆☆)
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・アメリカン・ドリーマー 理想の代償@ぴあ映画生活