source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
フランスの片田舎で農家を営むベリエ一家は、高校生の長女ポーラ以外、父も母も弟も聴覚障害者だった。だが一家は皆、明るく前向きで、ポーラが通訳の役目を果たして家族を支え、仲睦まじく暮らしていた。ある日、音楽教師トマソンは、ポーラの、美しい声と天賦の歌の才能に気付き、パリにある音楽学校のオーディションを勧める。ポーラは、自分の夢と、家族の耳となる義務感の間で思い悩むが…。
歌の才能を持つ少女と、耳が聞こえない家族の絆と成長を描く「エール!」は、ストレートに感動できるヒューマン・ドラマだ。障害者を扱う時、しばしばハレモノにさわるような演出になる日本映画と違い、欧米のそれはとにかく前向きであることが多い。本作もまたしかり。仲がいいベニエ家では、唯一耳が聞こえるポーラは、家族と社会のコミュニケーションの橋渡しの役目を担っているため、パリで歌の勉強をしたいという自分の夢に踏み出せない。一方で、両親はどこまでも奔放で、医者の前では娘に通訳させ性生活を語るし、弟は姉の友人を手話でクドいたりして、思わず笑ってしまう。障害という言葉の意味を問い直したくなるほど、いきいきとやりたいことにまい進しているのだ。とはいえ、夢に向かって羽ばたこうする娘との別れは、彼女が“耳”の役割を果たす以上に、親として心配なもの。この物語は、子供の成長は、同時に、親にも成長を促すという普遍的なテーマをも語っている。近年のフランス映画は、障害をポジティブに描く作品に佳作が多いが、本作もその系譜。決してお涙頂戴に走らず、ユーモアあり、淡い恋あり、家族愛ありで、にぎやかに進むストーリーが好ましい。オーディションで選ばれたヒロイン役のルアンヌ・エメラが、超絶美少女ではなく親しみやすいポッチャリ型なのがほほえましい。もちろん、クライマックス、自分の声が聞こえない両親に“聴かせる”歌は、最高に感動的だ。コ難しい、文学的、アンニュイといったイメージで、フランス映画を敬遠していた人にこそ、ぜひおすすめしたい。
歌の才能を持つ少女と、耳が聞こえない家族の絆と成長を描く「エール!」は、ストレートに感動できるヒューマン・ドラマだ。障害者を扱う時、しばしばハレモノにさわるような演出になる日本映画と違い、欧米のそれはとにかく前向きであることが多い。本作もまたしかり。仲がいいベニエ家では、唯一耳が聞こえるポーラは、家族と社会のコミュニケーションの橋渡しの役目を担っているため、パリで歌の勉強をしたいという自分の夢に踏み出せない。一方で、両親はどこまでも奔放で、医者の前では娘に通訳させ性生活を語るし、弟は姉の友人を手話でクドいたりして、思わず笑ってしまう。障害という言葉の意味を問い直したくなるほど、いきいきとやりたいことにまい進しているのだ。とはいえ、夢に向かって羽ばたこうする娘との別れは、彼女が“耳”の役割を果たす以上に、親として心配なもの。この物語は、子供の成長は、同時に、親にも成長を促すという普遍的なテーマをも語っている。近年のフランス映画は、障害をポジティブに描く作品に佳作が多いが、本作もその系譜。決してお涙頂戴に走らず、ユーモアあり、淡い恋あり、家族愛ありで、にぎやかに進むストーリーが好ましい。オーディションで選ばれたヒロイン役のルアンヌ・エメラが、超絶美少女ではなく親しみやすいポッチャリ型なのがほほえましい。もちろん、クライマックス、自分の声が聞こえない両親に“聴かせる”歌は、最高に感動的だ。コ難しい、文学的、アンニュイといったイメージで、フランス映画を敬遠していた人にこそ、ぜひおすすめしたい。
【70点】
(原題「THE BELIER FAMILY」)
(フランス/エリック・ラルティゴ監督/ルアンヌ・エメラ、カリン・ヴィアール、フランソワ・ダミアン、他)
・エール!@ぴあ映画生活