2015年11月12日木曜日

公開が延期になる映画のこと:米映画「ミケランジェロ・プロジェクト」

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


ひとりごと昨日のひとりごとが「たまにはこういうのもいいかも」と好評のメールをもらったので、今日も調子にのって同じ感じで。同じく点数はなしです(笑)。

公開が延期 or 中止になる映画といえば、興収が見込めない駄作を除いては、内容に問題がある映画ということになります。例えば、予期せぬ天災や悲劇的な事件・事故などで多くの被害者が出た場合、その方たちの心情に配慮するというケース。東日本大震災の後は、地震や津波などを連想する水の惨事を扱う映画の多くは、自粛という形で公開が延期になりました。中国で起こった大地震を扱った「唐山大地震」は、その内容からとても3.11の直後には直視できないものでしたが、その後、なんとか公開にこぎつけています。

11月6日(金)から公開されている「ミケランジェロ・プロジェクト」も、そんな中止・延期の果てに公開された、いわくつきの作品。ジョージ・クルーニーが監督・製作・脚本・主演をこなす同作品は、ナチスによって奪われた美術品を、アートに携わる人々が芸術戦士となって戦って取り戻すというエンタテインメント。出演している俳優も、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマンら超豪華キャストです。ヒットが見込めるこんな映画がなぜに延期に? 当初は編集の遅れやCG処理へのこだわり、はたまた公開時期をズラしてオスカー狙い…なんて意見もありましたっけ。

しかし、どうやらこの映画、内容そのものに問題があったみたい。「ミケランジェロ・プロジェクト」の公開中止・延期は、日本だけでなく、本国アメリカも含む海外でも同じでしたしね。美術品の返還というテーマでは、最近ではヘレン・ミレン主演の「黄金のアデーレ」がありましたが、戦争中での出来事とはいえ、現在の持ち主である国との利害関係もからむ、簡単ではない問題。ヘタすると、国際問題にも発展しかねないデリケートな素材ということ。「これはもともと自分のもの!」は、戦争の原因にもなれば、戦後のゴタゴタにもなるセリフです。すったもんだがあったおかげで、映画そのものを単純明快に楽しめなかったのは、ちょっと残念でした。エンタメ作品なのに~(泣)。

原作者のロバート・M・エドゼル氏は、映画「ミケランジェロ・プロジェクト」の原作になった「ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊『モニュメンツ・メン』の戦争」の著者。ハリウッドで映画化となると「ミケランジェロ・プロジェクト」が注目をあび、本当はそっとしておきたい問題にマスコミが群がる…なんてことも懸念されたんでしょうね。日本だって、戦時中に略奪して返してない美術品があるだろうし、それはおそらく過去の戦争に参加したどんな国も同じ事情なはず。この映画の場合、一種の政治的圧力だったのかもしれませんが、とにもかくにも(小規模ながら…)公開にこぎつけたのは、映画ファンとしては喜ばしいことと言えるでしょう。

(出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、他)
(2013年/アメリカ/監督・製作・脚本: ジョージ・クルーニー/原題「THE MONUMENTS MEN」)


MONUMENTS MEN
Columbia
2014

US版のDVD。
ちょっと「イングロリアス・バスターズ」風(笑)。 


ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争
ロバート M エドゼル
白水社
2010-12-21

この原作者、TV「世界一受けたい授業」に出てたそうです。
歴史のお勉強になる本!

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
ミケランジェロ・プロジェクト@ぴあ映画生活