2015年12月10日木曜日

杉原千畝 スギハラチウネ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


杉原千畝 (小学館文庫)
1934年、満州。外交官の杉原千畝は、語学力と情報網を武器にソ連北満州鉄道譲渡の交渉を優位に成立させる。その後、千畝は、1939年にリトアニアの日本領事館への勤務を命じられ、ポーランド人のペシェを新たな相棒として一大情報網を構築し、激動のヨーロッパ情勢を分析、日本に発信していく。やがて第二次世界大戦が勃発。混乱の中、ナチスに迫害され国を追われた大量のユダヤ難民のため、千畝は、自らの危険も顧みず、日本政府からの了承がないまま難民たちに通過ビザを発給することを決断する…。

“日本のシンドラー”と呼ばれた外交官の壮絶な半生を描く歴史ドラマ「杉原千畝 スギハラチウネ」。この人物に関しては、かつて「ビザと美徳」というドキュメンタリー映画で取り上げられたことがあるので、ユダヤ難民のためにビザを発行した美談としては知っていたが、杉原千畝が極めて優秀な“インテリジェンス・オフィサー(諜報外交官)”だったこと、その力を恐れたソ連から警戒され“ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)”に指定された日本初の外交官だったことを、この映画で初めて知った。いわゆる歴史秘話という感じだが、前半は諜報活動で仲間を失うなど苦い経験が語られ、本来、モスクワ大使館勤務を希望していたのに不本意ながら領事代理としてリトアニアに赴任した経緯も描かれる。千畝という人は自らが希望しない状況下でも、最善を尽くす現実的な人物だったのだ。優秀な分析力から戦争を回避しようと動いていたことを知れば、日本が彼のような人材を活かしきれなかったことが改めて悔やまれる。詳しい資料などがないためか、妻の幸子さんの扱いはステレオタイプで、どこまでも従順で明るく健気という描き方だが、この杉原夫人の内に秘めた芯の強さが、千畝を支えていたのだろう。大掛かりなポーランドロケなど、スケールを感じさせる一方で、時折登場するCGがあまりに稚拙なのが際立ってしまったのは残念だ。映画は生真面目な作りだが、決して退屈ではない。それは杉原千畝その人の人生があまりに劇的だからだ。歴史の裏側で活躍した日本人を知るいい機会である。
【65点】
(原題「杉原千畝」)
(日本/チェリン・グラック監督/唐沢寿明、小雪、ボリス・スジック、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
チケットぴあ

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