2016年3月30日水曜日

マジカル・ガール

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


失業中の中年男ルイスは、白血病で余命わずかな12歳の娘アリシアの願いをかなえようと決意する。それはアリシアが夢中になっている日本のアニメ“魔法少女ユキコ”のコスプレ衣装を手に入れることだった。高額な衣装を手に入れるため奔走するルイスの行動は、やがて、心に闇を抱える女性バルバラやワケありの元教師ダミアンらを巻き込み、予想もしない悲愴な事件を招くことになる…。

余命わずかな娘のために奔走する父親が巻き起こす騒動をブラックユーモアとシュールな映像で描き出す異色のスペイン映画「マジカル・ガール」。何だか楽しそうなタイトルだが、マジカル・ガールを訳すと魔法少女。日本のアニメではおなじみのキャラクターである。少女アリシアは魔法少女になりたいと強く願っていて、父親ルイスは失業中だというのに、7000ユーロ(約90万円)という高額なコスプレ衣装を手に入れようと決心する。あえて乱暴な言い方をするとしたら、この身の程知らずと貧困がすべての悲劇の引き金だとも言えるのだが、そこに精神を病んだバルバラが登場し、そのバルバラの守護天使ともいえる元教師ダミアンがからんで、トンデモナイという一言では片づけられない展開になっていく。まさに先読み不能だが、何しろタイトルは“マジカル・ガール”、アリシアとバルバラという2人の魔法少女対決という風にも解釈できるだろう。難病ものでスタートし、スリラーから、ホラー、バイオレンスとノワールを経て、ファンタジーへと至る。あぁ、頭が爆発しそう…。ふと冷静に考えると、ドレスだけでなくステッキまでも欲しがる人間の欲望こそが、底知れない悪ということなのだろうか。劇中で使われる音楽は、かつてアイドルだった長山洋子のデビュー曲「春はSA-RA SA-RA」。近年まれに見る、ぶっ飛ぶ作品だった。これだから映画は面白い。
【70点】
(原題「MAGICAL GIRL」)
(スペイン/カルロス・ベルムト監督/ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、他)
(先読み不能度:★★★★☆)
チケットぴあ

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