2016年4月21日木曜日

獣は月夜に夢を見る

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


北国のとある村。父と病気の母と暮らしている少女マリーは、職場で出会った青年・ダニエルに惹かれ、恋に落ちる。だが、マリーは自分自身の肉体に原因不明の異様な変化が起きていることに気付く。その異変と母が患う病について調べたマリーは、ある秘密にたどり着く。それが決して抗うことができないものだと知ったとき、マリーとダニエルはある決心をするが…。

北欧の閉ざされた村を舞台に、呪われた宿命を背負う少女がたどる恐ろしくも悲しい運命を描くミステリードラマ「獣は月夜に夢を見る」。監督・脚本・原案のヨナス・アレクサンダー・アーンビーは、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などのラース・フォン・トリアー監督作品の美術アシスタントだったいうだけあって、映像美はさすがだ。北欧独特の明度の低い寒々とした空気感や、そこに潜む幻想や伝説、宗教や因習にとらわれた閉塞的なコミュニティーでの異分子の悲しみなどを、アーティスティックに描いている。ネタバレは避けるが、主人公のマリーの中で、ある一定の年齢になると目覚める獣性は、少女から大人への変貌のメタファーなのだ。まるで時が止まったかのような海辺の村では、こんな非現実もありなのかもしれないと納得してしまう。「ぼくのエリ 200歳の少女」を彷彿とさせる…という評価をしばしば見かけるが、本作にはホラー色は希薄で、むしろの幻想譚の趣。それでいてノワールというほどクールでもない。この微妙な立ち位置と陰鬱なムード、そっけなさ(特に唐突に終わるラスト)が、北欧発のダーク・ファンタジーらしさなのだろう。
【60点】
(原題「WHEN ANIMALS DREAM」)
(デンマーク/フランス/ヨナス・アレクサンダー・アーンビー監督/ソニア・ズー、ラース・ミケルセン、ソニア・リクター、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)
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