2016年4月6日水曜日

LOVE【3D】

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




1月1日早朝。マーフィーが、若く美しい妻オミと2歳の息子ギャスパーと共に、ベッドに横たわっていると、1本の電話がかかってくる。再生したメッセージには、かつての恋人エレクトラの母親の切実な伝言が録音されていた。彼女は音信が途絶えた娘エレクトラの行方を心配していた。マーフィーは、アパートの一室で、生涯最大の恋だったエレクトラとの2年間を思い返していくが…。

激しい恋に落ちた男女の出会いから別れまでを3Dで描く「LOVE【3D】」。物語は終わった愛の記憶なのだが、赤裸々なセックス描写を交えながら描く狂おしいまでの愛は、あまりにも生々しい。ただ、鬼才ギャスパー・ノエは「3Dでポルノを撮りたい」と熱望していたそうだが、その必要性や効果はさほど感じない。いずれにしても、ついにこのジャンルにまで3Dの波が押し寄せたのかと感慨無量だ。しかしまぁ、この主人公ときたら、生涯最大の愛とはいえ、過去の女への未練がましい記憶に縛り付けられて、なんとも見事なダメンズぶりだ。しかも自分勝手で大人になりきれないときているしかしそれは、裏を返せば、最愛の女性と結ばれなかった男が生涯背負わねばならない十字架ともいえるのだ。出演者は、ほとんど無名の役者ばかりを起用しているため、まるでプライベート・フィルムを覗き見ているかのような雰囲気がある。ヨーロッパでは、本作のかなりハードな性描写は、そのまま上映されるが、もちろん日本ではNG。だが、ボカシにボカシた“演出”では、かえって淫靡な感じが増してしまうのではないか? いずれにしてもテンションが下がるのは間違いない。
【55点】
(原題「LOVE」)
(仏・ベルギー/ギャスパー・ノエ監督/カール・グルスマン、アオミ・ムヨック、クララ・クリスタン、他)
(共感度:★★★☆☆)