2016年9月13日火曜日

ハイ・ライズ

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


High-Rise
著名な建築家ロイヤルが設計した高層マンションは、上層階に行くほど富裕層が暮らしている近未来都市型住宅。そこに引っ越してきた医師のラングは、最上階に住むロイヤルから招待を受け、その豪華な暮らしぶりに驚く。だが高層階と下層階の間には激しいあつれきがあり、住民のワイルダーと知り合ったラングは、このマンション内で起こっている異常な事態を知ることになる。ある日、停電が起きたのを機に下層階の住民の暴動がはじまるが…。

ロンドン近郊にある、フロアによって階級が分かれた高層マンションでのすさまじい階級闘争に巻き込まれた主人公の運命を描くSFミステリー「ハイ・ライズ」。原作はJ・G・バラードの同名小説だ。私は原作を未読なのだが、果たして読んでいたら理解できたのか?!と首をかしげるほど、難解な作品である。主人公が越してきた高層マンションは、スーパー、医療施設、ジム、学校まで完備した隔離されたコミュニティー。高層階に行くほど富裕層で、階級闘争が起こるという設定は、走る列車の前後で階級が分かれた、ポン・ジュノ監督の「スノーピアサー」を思い出す。夜毎繰り広げられるパーティーは、乱痴気騒ぎを通り越して、混沌と狂気のるつぼと化している。セレブたちの堕落と倫理観の欠如、偽善や欺瞞が、無秩序を象徴している。最上階に住む設計者ロイヤルは神のような存在だが、暴動の首謀者にロボトミー手術を施そうとしたことから、事態は急変していく。愛欲と暴力が渦巻くこの閉ざされた空間には、どこにも共感する要素がない。これは見る側としては、かなり疲れる。久しぶりにクラクラするのほどのカオス・ムービー(あえて、こう呼ばせてもらう)を見たが、主人公を演じるトム・ヒドルストンの存在感だけは、数多い登場人物の中でも際立っていた。70年代風のスーツをサラリと着こなすかと思えば、鍛えあげた裸体を惜しげもなく披露。歪んだタワー・マンションは、アーティスティックだが人間の存在を拒絶しているかに見える。グロテスクとスタイリッシュが混じり合う、この映画の“歪み”に呼応するかのようだった。カルト映画としてなら、見る価値は十分にある。
【40点】
(原題「HIGH RISE」)
(イギリス/ベン・ウィートリー監督/トム・ヒドルストン、ルーク・エヴァンス、ジェレミー・アイアンズ、他)
(カオス度:★★★★★)
チケットぴあ

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