2016年9月8日木曜日

あなた、その川を渡らないで

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




韓国・江原道横城郡の古時里という小さな村に、結婚76年目一組の老になる夫婦が暮らしている。おそろいの韓服を着て、手をつないで外出し、二人はとても仲睦まじい。しかし、高齢の夫婦だけの生活では、おばあさんの膝の痛みや、おじいさんの体調など、心配事も多い。日に日に激しくなるおじいさんの咳を聞きながら、おばあさんは「天国でも着られるように」と、おじいさんの一番いい服を焚火にくべるのだった…。

仲むつまじく暮らす一組の老夫婦に15ヶ月間に渡って密着した韓国発のドキュメンタリー「あなた、その川を渡らないで」。韓国映画のラブストーリーで、若いカップルが過剰なまでにイチャイチャしている姿を見て、誇張じゃないの?!と常々思っていたのだが、どうやら、そうではないらしい。98歳のおじいさんと89歳のおばあさんは結婚76年目。小さな田舎の家で寄り添うに暮らしている。二人はいつも一緒だ。落ち葉や雪を互いにかけあってふざけあう姿は、見ているこちらが照れてしまうほど、ラブラブ状態。韓国の恋愛映画やドラマそのままの姿だ。映画はそんな愛情たっぷりの二人の姿を映しながら、老夫婦だけの暮らしを心配してケンカする子どもたちの姿や、身体が弱ってきたおじいさんを心配そうに世話するおばあさんの不安を映し出していく。長い長い年月、さまざまなことがあっただろうが、ことさらに苦労話を前面に出すことはない。12人いた子どもが6人になってしまった事実から、悲しみが浮かび上がる。すぐ目の前までやってきたおじいさんとの永遠の別れに心を痛め、自分もすぐに行く(逝く)から待っていてと語りかけるおばあさんの姿に、深い愛情と寂しさがにじんでいる。わざとらしい苦労話やエピソードは必要ないのだ。儒教の国の韓国ではお年寄りを大切にする。しかし近年ではそういう風潮は薄れ、都会でのドライな暮らしは互いを思いやる愛情や昔ながらのシンプルな暮らしに価値を見出さなくなっているそう。そこにこの映画だ。いやがおうでも心に響く。美しい小さな村で仙人のように暮らす、浮世離れした老夫婦の愛情あふれる人生に、思わず涙ぐんだ。
【60点】
(原題「My Love, Don't Cross That River」)
(韓国/チン・モヨン監督/チョ・ビョンマン、カン・ゲヨル、他)
(夫婦愛度:★★★★★)
チケットぴあ

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