source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
ある年代の方には知られた、イギリスの女性シンガー&アーティストであるケイト・ブッシュですが、『嵐が丘』を聴けば「ああ、この曲ね」とほとんどの方がご存知ではないかと思います。そのケイトの名盤『ドリーミング(The Dreaming)』(1982年)に収録された『狂気の家(Get Out of My House)』は『シャイニング』にインスパイアされて制作された曲だそうです。もっともインタビューで言及しているのが小説版なのですが、制作時期から考えてキューブリックの映画版を観ていないとは考えられないですね。歌詞もかなり映画版の雰囲気を感じます。
この『ドリーミング』というアルバム、36トラックMTRを2台シンクロさせた72トラックの多重録音を駆使し、ボーカルを重層的に重ねるという作り込みをしたそうです。昨年話題になった『ボヘミアン・ラプソディ』では20トラックくらいをコーラスに使ってオーバーダブしまくったそうですが、クイーンはロックバンドでコーラスは3人ですからね。ソロアーティストで72トラックは当時としては驚異的です。
ケイトは音楽的才能と凄まじい表現力とを兼ね備えたまさに「天才」なのですが、1980年代リバイバルの現在でも、あまり語られる機会がないように感じます。四つ打ちのダンス・エレクトロ・ポップばっかりではなく、こういったプリミティブでエモーショナルな音楽性を持ったアーティストも、もっと紹介や再評価をしてほしいですね。