2015年6月14日日曜日

ハイネケン誘拐の代償

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


KIDNAPPING MR. HEINEKEN
オランダで実際に起こった大富豪誘拐事件を描く「ハイネケン誘拐の代償」。レクター博士が人質じゃ、かなわない!

1983年、世界有数のビールメーカー、ハイネケンの経営者で大富豪のアルフレッド・ハイネケンが何者かに誘拐され、高額の身代金が要求される。警察は巨大組織による犯行と考えていたが、実際の犯人は犯罪経験のない幼なじみ5人の青年たちだった。計画は順調に思えたが、人質であるハイネケンの威圧的な態度に圧倒され、徐々に計画に狂いが生じ始める…。

1983年にオランダで実際に起こった大富豪誘拐事件の顛末を描く「ハイネケン誘拐の代償」。エミー賞受賞の犯罪ジャーナリスト、ピーター・R・デ・ブリーズのベストセラーを基に、実話を映画化した作品だが、身代金の行方など、今も多くの謎が残る事件なのだそうだ。事件の真偽はさておき、映画は、誘拐する側“素人集団”と誘拐される側“百戦錬磨の経営者”という対立の構図と、老獪な人質のペースに犯人が徐々に飲み込まれていく過程を重視している。何と言ってもハイネケンを演じるのはレクター博士ことアンソニー・ホプキンスなので、そこにいるだけで威圧されるのも無理はない。だが犯人と人質の息詰まる心理戦というほどの会話劇にはなっていない。むしろ、犯人グループ5人の奇妙な友情やわだかまり、犯罪に加担した負い目など、自滅に近い展開だ。印象に残るのは人質であるハイネケンが、犯人を素人の友人グループと見透かして言うセリフ。「裕福には二通りある。大金を手にするか、大勢の友人を持つかだ。両方はありえない」。これは自身の体験からの言葉だろうか。かけがえのない友情を手にしているのにそれに気付かない愚かな若者たちへの指針にも思える。やはり器が違うのだ。それにしても、エンドロールに流れる、その後の犯人グループの運命が興味深い。
【60点】
(原題「KIDNAPPING MR. HEINEKEN」)
(ベルギー・英・オランダ/ダニエル・アルフレッドソン監督/アンソニー・ホプキンス、ジム・スタージェス、サム・ワーシントン、他)
(心理戦度:★★☆☆☆)
チケットぴあ

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