2015年7月12日日曜日

バケモノの子

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


バケモノの子 (角川文庫)
孤独な少年とひとりぼっちのバケモノの交流を描くアニメーション「バケモノの子」。暴れん坊の熊徹の心意気に惚れる。

この世界には人間界「渋谷」とは別にバケモノの世界「渋天街」が存在する。孤独な少年・蓮は、ひょんなことから、バケモノの世界に迷い込み、暴れん坊のバケモノ・熊徹の弟子となって、九太という名を授けられる。やがて成長した九太は、人間とバケモノの世界を行き来し、渋谷で出会った高校生の楓から、様々な知識を吸収して自分が生きる道を模索するようになるのだが…。

今や日本のアニメ界を背負っているといっても過言ではない細田守監督の新作は、人間とバケモノのパラレルワールドを舞台にした壮大なアクション・ファンタジーだ。細田作品の良さは、虚実ともに、ディテールが実に細かくリアルに表現されていること。賑やかな渋谷と無国籍なムードの渋天街は、共に街の喧騒が伝わってくるようだ。物語の軸は少年の成長物語で、強くなるため修行する九太と教えることで自分も学ぶ熊徹の師弟関係は、デコボコ・コンビのバディ(相棒)にして、擬似親子関係のようでもある。熊徹と九太の修行はカンフー映画好きなら「ベスト・キッド」を連想してワクワクするだろう。キャラクターもまた、演じる声優陣の好演もあって、脇役までどれも魅力的だ。問題は物語で、今回は少々要素を詰め込みすぎた感がある。渋天街の後継者争い、九太(蓮)の淡い恋や離れて暮らしていた父親との関係、九太の将来への悩みと、話があちこちに飛ぶので何しろ慌ただしい。終盤、九太と熊徹コンビの前に意外な敵がたちはだかるが、この人物の背景や心の闇に関してはあまりに表層的なのが惜しい。それでも物語は十分にまとまっているし、渋谷の街全体を巻き込むクライマックスのバトルは、九太の成長を助けた文学「白鯨」をイメージしたビジュアルで、アクションというより壮麗なアートを見ているようで思わず息を呑んだ。強くなるために修行した少年が、心と身体のバランスがとれた、本当の強さを学ぶことで成長する。すべての世代が楽しめる王道エンタメ・アニメーションに仕上がっている。
【70点】
(原題「バケモノの子」)
(日本/細田守監督/(声)役所広司、宮崎あおい、染谷将太、他)
(バディ・ムービー度:★★★★★)
チケットぴあ

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バケモノの子@ぴあ映画生活