source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
一人前の経営コンサルタントになりたいと願う茜は、上司で恋人の坂本から、老舗化粧品会社に産業スパイとして潜入するよう命じられる。美容部員から本社の商品開発部へ異動することになった彼女は、坂本から、モデルチェンジするロングセラー商品の機密情報を入手するように指示される。不愛想だが仕事熱心な担当研究員・中野渡や、懸命に化粧品開発に打ち込む社員たちと過ごすうちに、茜の中で変化が生まれるが…。
化粧品業界の裏側に切り込んだヒューマン・ドラマ「コスメティックウォーズ」。化粧品業界と聞けば、華やかなイメージだが、商品開発の現場は、地道な研究と膨大なデータ収集の積み重ねで、まるで学術研究の場のよう。それでも研究員たちはより良い商品を作り出そうと日々努力を惜しまない。産業スパイが複数いて互いに監視するほど、その商品価値は高く、化粧品業界がいかに熾烈な競争の場かが見て取れる。映画は、産業スパイとなった主人公が、仕事熱心な社員たちと関わるうちに、まるで詐欺師や盗人まがいの行為に手を染める自分自身に疑問を持ち、変化していくというもの。とはいえ、ドラマはあくまでもライト感覚で、キャッチコピーにある“女の戦い”というほどのドロドロ感は感じられない軽さだ。全面協力しているALBIONアルビオン化粧品のPR映画のような趣も多々感じられ、いちいち微苦笑が出てしまう。そもそも一流の経営コンサルタントになりたいのに、素人レベルの腕しかないスパもどきで貴重な時間を費やすのが理解しがたいし、ドラマのディテールがあまりに荒いので、緊張感はまるでない。題材は面白いのに、結局のところ、着地点が安易すぎてがっかりしてしまったが、働くことへのプライドを失っていない点と、出演者がほぼスッピンで演技したという気合だけが救いだった。
【40点】
(原題「コスメティックウォーズ」)
(日本/鈴木浩介監督/大政絢、奥菜恵、高岡早紀、他)
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