2015年3月6日金曜日

妻への家路

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評








文化大革命を背景に切ない夫婦愛を描くヒューマンドラマ「妻への家路」。静かな作品だがイーモウとリーの黄金コンビで珠玉の出来栄え。



1977年。文化大革命が集結し20年ぶりに解放されたルー・イエンシーは、妻ワンイーのもとへ戻るが、待ちすぎた彼女は心労のあまり夫イエンシーの記憶だけを失っていた。イエンシーは他人としてワンイーの向かいに住み、娘タンタンの助けを借りながら、自分の事を思い出してもらおうと懸命に努力する。帰らぬ夫を駅に迎えに行くワンイーにそっと寄り添うイエンシーだったが…。



中国の巨匠チャン・イーモウ監督が、久し振りに名女優コン・リーと組んだ。共にオリンピックやハリウッドなどの、中国映画界とは異なる世界で活躍した後、原点回帰のように挑んだ本作は、「活きる」と同様、文化大革命の悲劇をモチーフとする物語だ。ただ、当局から目をつけられた「活きる」のように正面きっての批判精神はない。記憶障害の妻に寄り添う夫という設定は、「きみに読む物語」を思い起こさせるもので、基本的には切ないメロドラマという趣だ。それでもその語り口は名人芸のよう。コン・リーはもちろん、夫役のチェン・ダオミンの知性と寛容をにじませた風情がとてもいい。夫の隣で夫を待つという悲喜劇のような状況は、どこまでも静かで淡々と描かれる。降りしきる雪、駅の雑踏、暗い室内に入る柔らかな光と、丁寧なカメラワークが魅力的だ。バレエを愛する娘がその情熱を革命に利用され、家族に決定的な亀裂をもたらすのが哀しいが、ワンイーに寄り添うイエンシーはそんな娘とも静かに関係を修復する。諦念と赦しが混じり合う父娘の絆が、文革に引き裂かれた家族にかすかな希望を与えていた。

【65点】

(原題「COMING HOME」)

(中国/チャン・イーモウ監督/チェン・ダオミン、コン・リー、チャン・ホエウェン、他)

(夫婦愛度:★★★★☆)

チケットぴあ



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