2015年3月29日日曜日

【ブログ記事】『博士の異常な愛情』をより楽しく鑑賞するためのTips

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック






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 キネマ旬報DDによる『博士…』(池袋文芸坐のみ)『時計…』『バリー…』『フルメタル…』『アイズ…』上映がもう間近に迫って来ました。そこで「こんな小ネタを知っていればキューブリック作品をより楽しく鑑賞できますよ」という記事を投下したいと思います。今回は『博士の異常な愛情』編。尚、この記事はネタバレを含んでいて、過去に映画館や、BDやDVDで鑑賞済みの方に向けたものです。未見の方はまずは作品に集中し、この記事を読まないようにお願いいたします。



(1)本編で使用される曲は『トライ・ア・リトル・テンダネス』『ジョニーが凱旋するとき』『また会いましょう』のたった3曲。



(2)ペンタゴンの最高作戦室(ウォールーム)は米軍から何の資料も提供されなかったのでプロダクション・デザイナーのケン・アダムの創作で作られた。モチーフはカジノテーブル。



(3)リッパー将軍の執務室に貼られた基地の航空写真はロンドンのヒースロー空港



(4)銃撃戦が行われるパーブルソン空軍基地のロケ地は、撮影が行われていたシェパートン・スタジオの外観。



(5)マフリー大統領のハゲ頭をメイキャップしたのは『2001年…』で猿人やボーマンの老人姿を担当したスチュアート・フリーボーン



(6)B-52の内部のセットはジェーンなどの軍事専門誌の写真を元に制作されたが、思いのほか実物に近かったせいかFBIの捜査対象にされてしまった。



(7)爆撃手のゾッグ中尉を演じたジェームズ・アール・ジョーンズは後に『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーの声を担当する。つまり『時計…』のデヴィッド・プラウズと合わせるとベイダー卿の「中」と「声」が揃うことになる。



(8)マフリー大統領、マンドレイク大佐、ストレンジラブ博士の三役を演じたピーター・セラーズはB-52の機長のコング少佐も演じる予定だったが、テキサス訛りのセリフが気に入らず怪我を理由に辞退、キューブリックは途中まで監督していた『片目のジャック』に出演していたスリム・ピッケンズを思い出し、急遽キャスティングした。



(9)ストレンジラブ博士のドイツ語訛りは、映画撮影のスチール写真を担当したカメラマン、ウィージーの口調を真似たもの。



(10)コング少佐の「これだけあればヴェガスでたっぷり遊べるぞ」というセリフは本来「ダラス」だったが、公開直前にダラスでケネディ大統領が暗殺されたために急遽「ヴェガス」に差し替えられた。



(11)ミサイルによって破壊されたB-52の暗号封鎖回路「CRM114」は、その後キューブリック作品で様々な形で引用されている。



(12)ストレンジラブ博士が勝手に動く右手を殴るシーンで、ソ連大使を演じたピーター・ブルが思わず笑ってしまっている。



(13)ラストシーンは最高作戦室でパイ投げ合戦が始まり、それから「また会いましょう」のシーンにつながっていたが、キューブリックが「これは笑劇(ファース)であって風刺(サタイア)ではない」とカットした。タージドソン将軍を演じたジョージ・C・スコットによると「ケネディ大統領が暗殺されてしまったので変更された」と証言している。