source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
お金を使わない生活を目指す主人公の奮闘記「ジヌよさらば かむろば村へ」。濃味・松尾スズキと薄味・松田龍平の相性が抜群。
お金アレルギーになってしまった元銀行マンのタケは、「何も売らない」「何も買わない」というお金を一銭も使わない生活を目指して東北の寒村・かむろば村へと移住する。だがそこには世話焼きの村長・与三郎や目が光る老人“神様”など、強烈に濃い個性の村人たちが住んでいた。物々交換や自給自足でなんとか暮らすタケだったが、ある時、村に怪しげな男がやってくる…。
お金アレルギーになってしまった元銀行マンのタケは、「何も売らない」「何も買わない」というお金を一銭も使わない生活を目指して東北の寒村・かむろば村へと移住する。だがそこには世話焼きの村長・与三郎や目が光る老人“神様”など、強烈に濃い個性の村人たちが住んでいた。物々交換や自給自足でなんとか暮らすタケだったが、ある時、村に怪しげな男がやってくる…。
原作はいがらしみきおの人気コミック「かむろば村へ」。ジヌとは東北地方の言葉で“銭”のことだそうだ。「お金を使わない」生活が可能かというファンタジックな問いかけは物語の発端ではあるが、映画のテーマは経済ではなく、むしろ共同体の存在意義にある。お金恐怖症という病(?)以外、特に何のこだわりもない主人公タケが、いつのまにか村の生活の溶け込むプロセスが、村社会の光と影を体現していて面白い。タケは田舎にユートピアを夢見ているわけではなく、貨幣経済を憎んでいるわけでもない。その証拠に、田舎暮らしをナメたあげく村人から助けられたり、東北の寒さをヒートテックだけで乗り切ろうという甘さで凍死寸前になったりと、計画性は皆無なのだ。村人たちもまた決して善意や純朴だけではなく、田舎だからこそ携帯やITが必要と自覚していたり、何もかもつつ抜けの生活と秘密を使い分けたりと器用に立ち回る。「いろいろあるのよ、田舎だから」の“いろいろ”がこれまた特濃だ。キャラが立っているのも魅力で、監督だけでなく俳優としても登場する松尾スズキ、大人計画の面々、松たか子や二階堂ふみら旬の俳優たちと、役者のコラボが絶妙。そしてなんといってもヘンテコなキャラたちの中をひょうひょうと漂う松田龍平の“軽さ”がいい。「来る者拒まず、去る者追わず」で、いつのまにか幸福になっているタケ。やはり、かむろば村はユートピアなのかもしれない。
【65点】
(原題「ジヌよさらば かむろば村へ」)
(日本/松尾スズキ監督/松田龍平、阿部サダヲ、松たか子、他)
・ジヌよさらば ~かむろば村へ~@ぴあ映画生活