source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
(ショートバージョン)
1995年の五人組による暴力団五誠会系大越組襲撃事件から19年。五誠会は若き三代目の誠司が勢力を伸ばしていた。大越組の若頭の遺児・勇人は母を支えてまっとうに働いてる。勇人の幼馴染で大越組長の遺児・大輔は組再興の夢みながら誠司のボディーガードをしていた。 そんなある日、富田と名乗るルポライターの青年が19年前の事件を追って勇人の母を訪ねてきた。やがて、誠司の愛人で元アイドル・麻美を巻き込んで、GONINの新たな闘いが幕を開けることになる…。
石井隆監督の傑作バイオレンス「GONIN」の後には「GONIN2」があるのだが、正統という意味ではむしろ本作「GONIN サーガ」こそが続編といえよう。19年後の2014年を舞台に暴力団からの大金強奪事件の関係者の子どもたちが、復讐や因縁に絡み取られていく。一見犯罪ものやバイオレンスものに見えるが、この物語、よーく見ると、結構メロドラマ的要素が強い。“情”が勝ってしまったのは、「GONIN」の後もさまざまな映画を作ってきた石井監督が、やはり「GONIN」にこだわり続けていたからだろうか。特濃の俳優陣の中で、東出昌大がさわやかすぎて浮いているのはやむを得ないが、本作で輝いているのはむしろ女性キャラだ。特に土屋アンナがいい。五誠会の誠司に囲われているが、実は五誠会に深い恨みを抱いている元アイドルの麻美を演じる土屋が、殺し屋の助手役の福島リラと死闘を繰り広げる場面はなかなかの見せ場となっている。19年前の作品なので、本作で初めて「GONIN」に出会うファン向けに、序盤は懇切丁寧な説明が多くちょっとテンポが悪い。正直19年前の「GONIN」の狂気にも及んでいない。それでも、クライマックスの結婚式の場面での大乱闘は、これでもかというほどの流血で、石井美学が炸裂している。本作で一度限りの俳優復活を遂げた根津甚八の、文字通り、満身創痍の演技に注目してほしい。
【65点】
(原題「GONIN サーガ」)
(日本/石井隆監督/東出昌大、桐谷健太、土屋アンナ、他)