2015年11月26日木曜日

【ブログ記事】ライブ・シネマ・コンサート『2001年宇宙の旅』レビュー

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック


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※2015年11月25日鑑賞

 まず最初にこの企画を日本で実現させたKAJIMOTO様にお礼を言いたいと思います。思えば2年前、この記事で「日本でもこういう企画、やって欲しいのですが無理でしょうね」と書いたのですが、まさか本当に実現するとは思いませんでした。存分に堪能させていただきました。ありがとうございました。さて、肝心のレビューですが、私はクラシックファンである以前にキューブリックファンであるので、その視点でのレビューであることをお断りしておきます。

 まずは良かった点から。ハチャトュリアンの『アダージョ』はサントラと聴きまごうばかりに素晴らしかったです。『ドナウ』もがんばっていたと思います。サントラに使用されたのはカラヤン&ベルリンフィルの1966年録音盤ですが、かなり忠実に再現していたのではないでしょうか。ただ、映画ではエアリーズ号が月面に接地する瞬間のタイミングで休符が入るのですが、そこが若干ずれていたのが気になりました。でもこれは仕方ないかもしれません。『ドナウ』は指揮者によって演奏時間が1分くらい平気で前後する曲ですので。エンドクレジットの『ドナウ』のフルコーラスは映像の縛りがないせいか、とてものびのびとした演奏が印象的でした。

 嬉しかったのはINTERMISSONでの『アトモスフェール』が再現されていた点です。『2001年…』を映画館でご覧になった方はご存知ですが、休憩中は真っ暗な映画館の中この『アトモスフェール』が流れるのです。今回のコンサートでは休憩明けのオケの音出しも兼ねてこの曲が演奏されていました。オーバーチュアーでもこの『アトモスフェール』が演奏されていましたが、私は『ツァラトウストラ』よりこちらの方が感動しました。

 リゲティ関連ではモノリスの『レクイエム(キリエ)』はさすがの迫力でしたね。スターゲート・シークエンスで使用されたのは『ルクス・エテルナ』『アトモスフェール』ですが、キューブリックの無慈悲なエディットに再現には苦労があったように思われます。白い部屋の『アヴァンチュール』はキューブリックがエコーその他で加工しまくったので映画のサントラでした。まあこれを演るのはほぼ不可能ですのでしょうがないですね。

 残念な点ですが、オケが通常より前の位置だったせいか、音響があまり良くありませんでした。ステージ奥からスピーカー、スクリーン、合唱隊、オケの順だと思いますが、こういったイレギュラーな使用方法はこの箱では想定されていない筈で、鳴りが全体的に弱かったですね。クラッシックファンがどう思うかはわかりませんが、今後こういう映画とオケとのコラボ企画を定番化させるためにはPAを使うのも選択肢のひとつかもしれません。あと肝心の映画が譜面ライトのせいで観づらかったのが残念です。ここはもう少し工夫が欲しかったところです。

 そして鑑賞後の冷たい雨の降る渋谷からの帰り道、キューブリックファンなら誰もがこう思った筈です。『2001年…』でできるなら『時計…』でもできる筈と・・・アレックスのように生の第九に酔いしれたい!そして『雨に唄えば』に打ちのめされたいと!

 この企画の是非の実現をお待ちいたしております。