2015年11月23日月曜日

レインツリーの国

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


レインツリーの国 (新潮文庫)
東京で食品会社の営業として働く伸行は、中学時代に好きだった本「フェアリーゲーム」のことをネットで検索し「レインツリーの国」というブログにたどり着く。都内在住の管理人のひとみの意見に共感し、メールを交換することに。次第にひとみに惹かれていく伸行は「直接会いたい」と申し出るが、ひとみはなぜか頑なに拒否する。実は彼女は高校生の時以来、難聴を患っていたのだが…。

有川浩のヒット小説を原作とする「レインツリーの国」は、三宅喜重監督が、有川の小説の映画化を「阪急電車 片道15分の奇跡」「県庁おもてなし課」に続いて手がけるラブストーリーだ。孤独な女性ひとみが、実は難聴を患っているという“秘密”は、映画の序盤では隠されているが、すぐに観客に明かされる。少し不器用だが、まっすぐな性格の伸行と内向的なひとみには、難聴という障害以上に、言葉に対して互いに繊細すぎる感覚を持っているがために、より難しい道をしばしば選択してしまい、関係がこじれてしまうのだ。一般企業で働くひとみの苦労や、難聴(しかも中途失聴で感音性難聴)であることの生活上の不自由なども、さりげなく盛り込まれているし、周囲から受ける心無い仕打ちは、最後まで解決しない点などには、障害者を取り巻く環境の、きれいごとではないリアルさを感じさせる。だが、本作は社会派ではなく基本的にラブストーリー。初めてのデートのときめきや、誤解からのすれ違い、キラキラのイルミネーションをバックに見つめ合う…などの、恋愛映画の王道ともいえる設定はしっかり抑えている。原作ファンからは少々キビしい意見もあるようだが、私はそれほどヒドいとは思わない。確かに演技は拙いが、むしろアイドルが出演している割には、とても端正な出来だと感じるくらいだ。Kis-My-Ft2の玉森裕太は東京出身で、彼の関西弁はあまり評判が良くないが、関西出身の人間が東京で働いているという設定なら、許せる範囲ではなかろうか。ベタなライバル関係や命にかかわる難病などは登場せず、ごく平凡な男女が幸せになるために勇気を出して一歩前に踏み出す物語。後味は悪くない。
【55点】
(原題「レインツリーの国」)
(日本/三宅喜重監督/玉森裕太、西内まりや、森カンナ、他)
(こじらせ度:★★★★☆)
チケットぴあ

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