2015年12月4日金曜日

【関連書籍】友よ 弔辞という詩

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック



友よ 弔辞という詩(amazon)


 映画、ファッション、音楽、アート、政治家、思想家、科学者・・・各界著名人が逝去の際に送られた弔辞を集めた追悼文集。キューブリックはプロデューサーであり、友人であり、義理の弟でもあったヤン・ハーランが寄せた追悼文が収録されています。

 ここにあるヤンの生々しい証言は、キューブリックの身近にいた人間の多くが抱える感情「愛情と憎悪」そのものです。さらにヤンの場合身内でもあったので、いいようにキューブリックに使われていた様子がありあり伺えます。ある意味ヤンは「独裁者スタンリー・キューブリック」の最大の被害者でしょう。そのキューブリックに対する苦々しい思いと、それをもう実感できないんだという喪失感が素直に綴られています。

 あと、葬式を嫌っていたというのが無神論者であるキューブリックらしいですね。これは病気に対して神経質な所や、飛行機嫌いなどにも通じるキューブリックの「生への執着」への表れでしょう。「生きてるからこそ好きなだけ映画を作れるんだ」「死んでしまったらそれさえできないじゃないか、死んだあとの事なんて興味ないね」。自分の両親の葬式にさえ出席しなかった(当時両親はカリフォルニア在住なので、飛行機に乗るのが嫌だったのもあるでしょう)究極のリアリストであるキューブリックならきっとそう考えるでしょう。これはスティーブン・キングにかけた電話の「死後の世界があるなんて楽天的な考え方だとは思わないか?」にも繋がります。『シャイニング』から宗教的な要素を全て排除し、アメリカの歴史的・人種的な要素へ変更したというのも頷けるというものです。

 三人の娘に対しても支配的で、それに娘たちが反発していた事実はカタリーナの口からも度々語られていますが、なんでもかんでもコントロールしたがるキューブリックにとって、自分の思い通りにならない娘たちは頭痛のタネだったでしょうね。特にヴィヴィアンはそれが一番悪い形で顕在化してしまったようです。早くなんとか解決して欲しいものです(『シャイニング』や『フルメタル…』の未公開メイキングシーンが見たい!という意味でも)。

 ところでこの追悼文集ですが、チョイスに全く脈絡がないんですね。せめてジャンル別に章立てにしてもらえれば読みやすかったのに、とちょっと残念な気がします。

 その他追悼された各界著名人と追悼文寄稿者は以下の通り。

ハンフリー・ボガートに捧ぐ/ジョン・ヒューストン
ダリル・ザナックに捧ぐ/オーソン・ウェルズ
ジャンニ・ヴェルサーチに捧ぐ/マドンナ
ボブ・フォッシーに捧ぐ/ニール・サイモン
アーヴィング・バーリンに捧ぐ/サミュエル・ゴールドウィン・ジュニア
カール・ユングに捧ぐ/ローレンス・ヴァン・デル・ポスト
アルバート・アインシュタインに捧ぐ/アーンスト・ストラウス
トマス・エジソンに捧ぐ/J.F.オーウェンズ
チェ・ゲバラに捧ぐ/フィデル・カストロ
カール・マルクスに捧ぐ/フリードリヒ・エンゲルス
アンディ・ウォーホールに捧ぐ/ジョン・リチャードソン
ジャニス・ジョップリンに捧ぐ/ラルフ・グリーソン
チャールズ・シュルツに捧ぐ/キャシー・ガイズワイト
マーク・トウェインに捧ぐ/ヘンリー・ヴァン・ダイク
ダシール・ハメットに捧ぐ/リリアン・ヘルマン
リリアン・ヘルマンに捧ぐ/ウィリアム・スタイロン
ヴァージニア・ウルフに捧ぐ/クリストファー・イシャーウッド
ビリー・ワイルダーに捧ぐ/ラリー・ゲルバート
デイヴィッド・O・セルズニックに捧ぐ/トルーマン・カポーティ
ジェームズ・ディーンに捧ぐ/クセン・ハーヴェイ
リヴァー・フェニックスに捧ぐ/ウィリアム・リチャート
チャールズ・ティファニーに捧ぐ/アナベル・A.ゴアン
ヘレン・ケラーに捧ぐ/リスター・ヒル
マルコムXに捧ぐ/オシー・デイヴィス
ジョン・F・ケネディに捧ぐ/アール・ウォーレン
ジャクリーン・ケネディ・オナシスに捧ぐ/エドワード・M.ケネディ
アメリア・エアハートに捧ぐ/ミュリエル・モーリセイ
チャレンジャー号の字宙飛行士たちに捧ぐ/ロナルド・レーガン

情報提供:ロイド様