2016年1月27日水曜日

愛しき人生のつくりかた

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


Bo Les Souvenirs
3人の息子を育て上げ、夫に先立たれた老女マドレーヌはパリで静かに暮らしていた。だが、突然倒れて病院に運ばれたことをきっかけに、一人暮らしを心配した長男ミシェルらに説得されて老人ホームに入ることに。殺風景な部屋や口に合わない食事、無気力な老人たちに囲まれ、まだまだ元気なマドレーヌはすっかり気が滅入ってしまう。ホテルの夜勤をしながら小説を書いている孫のロマンは、そんな祖母を優しく励ますのだった。ある日、マドレーヌが突然ホームから姿を消したと知らせが入る…。

パリに暮らす3世代の家族の人生を優しいまなざしでみつめたヒューマン・ドラマ「愛しき人生のつくりかた」。85歳を迎えた老女マドレーヌは生まれ故郷であるノルマンディーの小さな町エトルタに、やり残したことがあった。定年退職を迎えた長男ミシェルは妻を愛しているのに、なんだか最近ぎくしゃくしてばかり。大学生のロマンは、将来への不安と運命の女性との恋に思い悩む。それぞれ年齢は違うが、皆、自分の居場所をみつけようと懸命に人生を模索中だ。こう書くと、ずいぶん重いテーマに思えるが、そこはフランス流。ユーモアとさりげなさでさらりと物語るところが上手い。仏では国民的歌手として知られ、アラン・レネやルネ・クレマン監督作品にも出演した大御所アニー・コルディ、名優ミシェル・ブランと、ベテラン勢がしっかりと存在感を示し、若手俳優といい対比をなしている。対比といえば、大都会パリと海辺の町エトルタの対比も効いている。主要キャラはもちろん好演だが、実はこの作品、脇役キャラがとてもいい味を出しているのだ。特に、苦虫をかみつぶしたような顔をしながら人生哲学のようなヒントをさらりと口にするコンビニの店員は最高である。ついでに言えば、ロマンが勤務するホテルの主人役として出演しているのが監督のジャン=ポール・ルーヴ本人だったりする。墓地ではじまり墓地で終わる本作は、普遍的な家族愛について語った前向きなドラマだ。ほろ苦くて優しくて繊細。見終わった後は、きっと心がじんわりと温まる。
【65点】
(原題「LES SOUVENIRS」)
(フランス/ジャン=ポール・ルーヴ監督/アニー・コルディ、ミシェル・ブラン、マチュー・スピノジ、他)
(自分探し度:★★★★☆)
チケットぴあ

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