source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
三十路前のミツオは、ボクシングに人生をかけているが、なかなか芽が出ず空虚な日々を過ごしていた。ある日、漫画家である兄が2匹の子猫を拾ってくる。子猫の兄弟チンとクロは、超やんちゃで超きまま。猫嫌いなミツオは翻弄されるが、アパートの大家さんや猫好きの女性のウメさんの応援もあって、少しずつ距離を縮めていく。そんな中、ミツオは試合でのケガによってプロボクサーへの道が閉ざされてしまう…。
さえないボクサーと2匹の子猫との共同生活をつづったヒューマンドラマ「猫なんかよんでもこない。」は、杉作による人気漫画が原作で、実話に基づくあったかいお話だ。何でも、大人が泣ける猫漫画として有名らしいが、映画も、猫の特性をよくつかんでいる。気まぐれな猫は、基本的に人間に媚びない。基本的に何もしない。なのに癒される。猫好きの心をわしづかみにするのはこの2点だ。つるの剛士や市川実和子ら、芸能界でも猫好きで知られる俳優たちを起用しているところも魅力になっている。ミツオは元来犬派で猫嫌い。でもボクシングという唯一の夢が砕けたとき、猫たちが日常の愛おしさに気づかせてくれる。猫に振り回されているようにみえて、今まで気にも留めなかった日々の暮らしや、周囲の人々との触れ合いによって、ボクシングの外側にあった世界に気づいていくのだ。猫好きにとってたまらない可愛い猫たちが登場するが、落ち着いて考えれば、猫の飼い方や接し方に不満を持つ人もいるだろう。映画としても、エピソードは散文で、ボクシングも漫画もすべてが中途半端に終わっている。それでも、大の猫好きの私としては、こういう癒し系の猫映画にはつい点が甘くなってしまう。我ながら、困ったものだ。
【50点】
(原題「猫なんかよんでもこない。」)
(日本/山本透監督/ 風間俊介、つるの剛士、市川実和子、他)