2016年2月25日木曜日

同級生

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


同級生 (EDGE COMIX)
秀才の佐条利人とバンドマンの草壁光。容姿も言動も正反対で、およそ交わりそうにもなかった2人の男子高校生は、合唱祭の練習をきっかけに言葉を交わすようになる。放課後の練習を通して次第に親しくなった2人は、互いに恋の感情を抱く。とまどいながらも、つきあいはじめた2人だったが、やがて将来や進学を考える時期が訪れる…。

人気漫画家、中村明日美子のBL(ボーイズラブ)・コミックをアニメーション化した青春ラブストーリー「同級生」。約60分と短い作品なので、物語というよりエッセイのようだ。物語は、BLであることを除けば、正反対の二人が互いに惹かれあい、相手を大切に思いながら純愛を育み成長していくという、オーソドックスな青春恋愛映画である。バンドと音楽にのめりこみ女子からも好かれる草壁は、一見お調子者だが、ピュアな恋愛感情をストレートにぶつけるタイプ。一方、佐条はそんな草壁のアプローチを最初は拒絶しながらもゆっくりと心を開いていく。印象的なのは、個性的な絵柄と構図の面白さだ。アニメ・スタジオのA-1 Picturesが手掛けるビジュアルは、にじむような手彩のタッチが瑞々しく、恋にとまどい将来に悩む思春期の心の揺れとマッチしている。たっぷりと余白をとり、時にスクリーンの8割が何もない空間になることもある大胆な構図には、センスを感じるし、独特の抒情も。日本のアニメは細部まで緻密に描きこみ情報過多なのが特徴だが、本作のテイストは、むしろユーロ・アニメ(ヨーロッパのアニメーション)の趣を感じさせるものだ。大きな余白から徐々に現れる、空、木々、光。そこに、どうしようもなく高まる恋の感情が水彩画のように、ゆっくりと立ち現れる。原作は未読だが、続編に「卒業生」という作品がある。彼らのその後がなんだか気になった。
【55点】
(原題「同級生」)
(日本/中村章子監督/(声)野島健児、神谷浩史、石川英郎、他)
(絵柄の個性度:★★★★☆)
チケットぴあ

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