2018年9月26日水曜日

【関連動画】『2001年宇宙の旅』の「間違い」を集めた動画

source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック




 『2001年…』に限らず、映画には間違いがつきものですが、その種類を大きく分類すると以下の3つに分けられると思います

(1)考証時(制作当時の知見に基づく)のミス

(2)撮影時(プロップの取り違えなど)のミス

(3)編集時(テイク違いの矛盾)のミス


この動画にはその全てが紹介されていますが、(1)は月の重力下での人間の動きが1Gと変わらないなど、(2)は月面から見る地球の欠け方がシーンによって違う、食事ペーストの順番が違う、ボーマンがスケッチを持っている・いないなど、(3)は猿人の持っている骨と投げた骨が違う、女性の足の位置が違う、フロイド博士の持っている資料が違うなどです。キューブリックはもちろん、どの映画監督もこういったミスを無くそうと、ポラロイド写真を撮ったり、記録をつけるなどしていたのですが、CGで修正できる現在とは違い、この時代の映画は修正されずにそのまま残っていることが多く、ファンの間でも度々話題になっていますね。

 キューブリックはワンシーンにじっくりと時間をかけ、テイクも数多く撮るので、実は「ミスの多い」監督です。それをいちいちあげつらって「完璧主義者のキューブリックがミスをした!」と、鬼の首を取ったように指摘する方もいますが、それには大きな誤解があります。キューブリックの「完璧主義」は「ミスを許さない完璧主義」ではなく、「妥協を許さない完璧主義」(管理人はその誤解を招かないよう、あえて「些細なことまでとことんこだわるこだわり主義」と呼んでいます)です。キューブリックはことあるたびにインタビューなどで繰り返しこう語っています。

 監督にとって、どう撮るかは、むしろ簡単な決定で、楽な仕事だ。重要なのはシュート(撮影)する前の段階で、それは撮影するに足る何事かを起こしえるかへの挑戦なのだ、撮る内容をいかに充実したものにするかだ。

(引用元:イメージフォーラム1988年6月号/キューブリックのロングインタビュー


つまり、「良いシーンが撮れるまでテイクを繰り返すし、良いシーンが撮れれば、少々のミスは許容する」のです。その象徴的なシーンが以下になります。



このシーンでは、ドアを壊すテイクと、「Here's Johnny!」と笑うテイクが違うことが、割れたドアの壊れ方を見れば一目瞭然です。キューブリックもそれに気づいていたはずですが、あえて無視し、最高のテイクと最高のテイクをつなげたということになります。

 これらの「映画上のミス」は話のネタ的には面白いので、そのレベルで小ネタ的に話題にするのはアリかな、とは思います。ですが、こういった瑣末なミスをあげつらって、その映画監督の批判の論拠にするのは違うと思います。キューブリックは「完璧主義者」と言われているだけに、特にその俎上に上がりやすい監督です。生半可な知識しかない人ほど的外れな「ミス批判」をしがち(批判をするなら本質的な部分でして欲しい)なので、ファンとしては「またか・・・」と思いつつ、生暖かい目でスルーしてあげるのが正しい姿なのかな、と思っています。