2016年1月19日火曜日

最愛の子

source: 映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評




中国・深せんの街中で、ある日突然3歳の息子ポンポンが姿を消した。父であるティエンと離婚した元妻ジュアンは、死にもの狂いに息子を探すがその消息はまったくつかめない。防犯カメラの映像には、何者かがポンポンを抱きかかえて連れ去る姿が映っていた。事件から3年後、山村でポンポンは発見されるが、実の親のことをまったく覚えておらず、育ての母親ホンチンを慕っていた…。

中国で頻発する児童誘拐事件を題材にした「最愛の子」。実話をもとにしたこの映画は、一人っ子政策や経済格差といった社会問題を内包しつつ、生みの親、育ての親それぞれの苦悩、子どもが親を慕う愛情などを多角的に描く問題作だ。中国では年間20万人もの子どもが行方不明になっているという事実に驚いたが、誘拐事件や人身売買などを通して中国社会の闇をあぶりだす内容のこの作品が、映画の検閲を行う中国で、よくぞ作れたものだと感心した。制作スタッフは映画を作り上げるまで、かなり苦労したに違いない。物語では、親たちの愛と子どもの愛がすれ違ってしまうのが実に切ない。育ての母であるホンチンは、亡き夫が子どもを誘拐してきたことを知らなかったという設定だが、心のどこかで気づいていたのだ。だが無学な彼女が、法や倫理を超えて子どもに愛情を注ぐ姿は、やるせない感動を呼ぶ。このホンチンを演じているのが人気女優のヴィッキー・チャオ。美人女優の彼女が、いつもの華やかな姿を封印し、全編ノーメイクで貧しい農家の主婦を熱演しているのが見所だ。この作品で彼女は多くの映画祭で賞に輝いたのもうなずける。一方で、中国で大ヒットし社会現象となった本作は、誘拐された子どもや女性を買うことは重罪とみなす刑法の改正法案に影響を与えたそうだ。たかが映画だが、されど映画。映像メディアの力は、まだまだ捨てたものではない。
【65点】
(原題「親愛的/DEAREST」)
(中国・香港/ピータ・チャン監督/ヴィッキー・チャオ、ホアン・ボー、トン・ダーウェイ、他)
(親子愛度:★★★★★)
チケットぴあ

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最愛の子@ぴあ映画生活