source: KUBRICK.blog.jp|スタンリー・キューブリック
2001年宇宙の旅 [Blu-ray](amazon)
20世紀から21世紀当初には優れたSF映画がたくさんあった。これらの作品は希望と夢と悪夢の未来を大スクリーンに描き出し、衝撃的だが現実離れした予言を行なった。
そして時は流れ2017年。中にはびっくりするほど的確な未来予測もあったが、外れてしまったものもあった。
ちょっと時間軸がずれただけで、そのあと起こりうる可能性も高いものもから、ちょっとこじつけなんじゃないの?と思うものまで、その主だった10作品が海外ランキングサイトにて特集されていたので見ていくことにしよう、そうしよう。
〈中略〉
SF映画史上の最高傑作に挙げられる本作品。劇中で描かれたいくつもの未来の技術が、後に現実に登場している。
本作品がリスト入りしたのは、宇宙旅行の時系列に問題があるからだ。現段階では木星はおろか、火星への有人飛行も実現しておらず、2001年にHAL 9000のようなコンピューターも開発されていない。
制作当時、スタンリー・キューブリックらは最新の宇宙技術について綿密な調査を行なっており、映画にリアリズムを与えることに成功した。
同時に、未来的な雰囲気を演出するために現実の科学者を追い抜く必要もあった。このために興味深い技術が映画に登場しているが、それは現在と過去の趣を持つ。
例えば、電話付きのブリーフケースだ。これはタブレットやスマートフォンとの類似点が見られるが、いずれにせよ2001年には登場していない。
『2001年宇宙の旅』には、現代社会を超えている技術と古い技術が混在している。時系列の点ではまったく未来の予測を間違っていたが、方向性の点では正しかった。
〈以下略〉
(全文はリンク先へ:カラパイア/2017年7月2日)
『2001年…』関連の資料を読んでみると、キューブリックは最初からできるだけ正確にされた未来予測に基づく映画を作ろうとしたわけではなく、割とアバウトな「未来感」を持った映画を考えていたようです。手塚治虫に美術監督のオファーをしたのもそれが理由ですし、クラークとの共同作業で作り出された物語も、当初はいわゆる「当時のSF映画のクオリティの範囲」を大きく飛び越えるようなものではありませんでした。それが「超リアリズム主義」に変わったのは、スタッフにNASAを退職したばかりのフレデリック・オードウェイとハリー・ラングが参加したのかきっかけだったのではないでしょうか。
彼らを通して当時最先端のNASAのテクノロジーやデザインがキューブリックの元に届きだすと、とたんにキューブリックの「こだわりの虫」が騒ぎ出し、それまで決定稿と思われていた脚本に次々にNGを出し始めます。また、NASAを通じて当時NASAに協力していた関連各企業(IBMやGM、ベルなど)とのコネができたことをいいことに、映画内で企業の宣伝(セットやガジェットにロゴを入れる)をするのと引き換えにデザインを担当させるという方法を採用しました。このことが素人が勝手にデザインしていたそれまでのSF映画のセットデザインをはるかに凌駕した主な理由ではないかと考えています。同年に公開された『猿の惑星』にも宇宙船や冷凍睡眠装置が登場しますが、専門家のデザインと素人のデザインの違いははっきりと見て取れます。キューブリックが一番苦労したデザインは専門家のいない「宇宙人」(結局全てボツにした)だったことを考えると、『2001年…』が公開から50年になろうとしていうのに輝きを失わないのは、キューブリックの功績は当然としても、それに陰に日向に協力した数多くの「専門家」(もちろん科学者でもあったアーサー・C・クラークを含む)の存在があったことは、もっと周知されてしかるべきだと思っています。